コロナ下で相次ぐ孤独死 半年以上たって発見のケースも 感染恐れ外出自粛、周囲と疎遠に 都市部に多い傾向 鹿児島
2022年12月30日南日本新聞
新型コロナウイルスの影響が長引く中、誰にもみとられずに亡くなる高齢者の孤独死が鹿児島県内で後を絶たない。感染の不安から家族や近所との付き合いを控え、死後半年以上たって発見されたケースもある。コロナ禍で生活困窮者が増え、「あらゆる世代で孤独死のリスクは増している」と懸念する声も上がる。
鹿児島市の住宅街で今春、独居の70代男性が死亡しているのが見つかった。発見したのは「何度電話しても応答がない」とこの家を訪れた親族。死後1週間以上たっていたとみられる。
親族らによると、男性は10年以上前に妻に先立たれ、子どもとは疎遠だった。コロナ流行前は実家に定期的に顔を出したり、地域行事に参加したりしていたが、感染拡大後は自宅にこもりがちで酒量が増えた。部屋には、買い置きしたカップ麺などの食料品が入った段ボールやトイレットペーパー、焼酎の紙パックが大量に残っていたという。
近所の女性(58)は「家を訪ねると話が止まらないこともあり、さみしさの裏返しだったのかもしれない。もっと気にかけるべきだった」と悔やむ。
■昨年度、最多更新
孤独死に関する国の定義や統計はない。県は独自に「65歳以上の1人暮らしで誰にもみとられずに亡くなり、死後2日以上たって発見され、市町村が把握したもの」と定義。調査を始めた2010年度の24人から増加傾向にあり、21年度は前年より34人増の96人で最多だった。
県によると、市町村は民生委員や自治会長を通じて把握する場合が多い。調査には限界があり、実態はこれより多い可能性がある。
遺品整理事業を手がけるMMSEサポート(鹿児島市)はコロナ感染が広がった20〜22年、孤独死関連の年間の依頼数は増減があるが、遺体の発見が遅れる傾向が強まり、半年以上たったケースもあった。人口が少ない地域より、町の中心部や住宅街の方が圧倒的に多いという。
自身も現場に入る生前整理・遺品整理専門事業部の北村敏也部長(36)は「都市部を中心に、コロナで人間関係の希薄化が加速している」と説明。社会からの孤立を背景に「生活意欲が衰えてセルフネグレクト(自己放任)に陥り、家にごみをため込んでいる人が少なくない」と明かす。
■居場所づくりを
県社会福祉協議会などによると、コロナの感染拡大で難しくなっていた見守り活動や交流サロンを再開する動きは広がっている。
薩摩川内市の峰山地区コミュニティセンターは高齢者らの外出を促そうと、障害者就労支援事業所が作った野菜の販売を昨年始めた。金券と交換できるポイントを付与する市の介護予防事業の対象となり、住民が次々に訪れる。田邑俊和主事(55)は「自由に集う開放型サロンとして、地域の困り事など情報を収集する場になっている」と話す。
市社協の生活支援コーディネーター福元こずえさん(43)は「コロナ禍で生活が苦しくなり1人で悩みを抱える人も増え、孤独死は独居高齢者だけの問題ではない」と指摘。見守り活動を担う側の高齢化が進む中、「社会から孤立しがちな人を把握したり、居場所をつくったりする取り組みは一層重要になっている」と強調する。