団地で見守りサービス続々 孤立死防止で居住者安心

2022年12月18日神奈川新聞


 団地などの賃貸住宅で、高齢者向けの見守りサービスが広がっている。単身の入居者が安心して住み続けられるだけではなく、孤立死を防げば経営者側のリスク軽減につながる側面も。県内の住宅事業者らは、「より多くの人にサービスを利用してほしい」と普及活動に力を入れている。

 県住宅供給公社(横浜市中区)は2月、1人暮らしの65歳以上の入居者を対象に、IT(情報技術)機器を利用した見守り支援サービス「レフパック」の無償提供を開始した。

 縦10センチ、横3センチほどの機器を冷蔵庫など開閉頻度が高い扉に取り付けると、センサーが振動を感知。生活リズムを、離れて暮らす家族や友人など事前登録した人にメールで知らせる。

 取り組みの背景にあるのは、入居者の高齢化に伴う孤立死の問題だ。公社が所有・管理する県内の賃貸住宅約1万3千戸のうち、約6割が65歳以上。近年は、入居者の安否確認が必要な事案が年間30~50件ほど発生し、そのうち10~30件で死亡が確認された。

 これまでも公社は、自治会や、新聞や牛乳の配達事業者と連携して、見守り活動を実施。ポストに郵便物がたまっていたり、洗濯物が出しっ放しになっていたり、異変を感じた場合は連絡する体制を整えてきた。

 ただ、「異変にいち早く気付き、救命のためには、住宅の『外』からだけではなく、『内』からの見守りが必要」と担当者。自宅内での居住者の様子が分かるよう、ITの活用による見守り方法を検討し始めたという。

 見守り支援は、賃貸経営面でのリスク軽減にもつながる。仮に入居者が孤立死をした場合、特殊清掃の費用がかかったり、「特定住戸(事故物件)」として賃料を減額したりと、公社側の負担にもなる。それならば、より多くの人に利用してもらおうと、毎月のサービス利用料は公社が全額負担することとした。

 現在は、対象を自治会活動が活発な11団地に限定しており、計65世帯が利用。将来的には全団地に拡大し、年齢に関係なく希望者全員がサービスを受けられるようにする方針だ。