AI新時代/おきでんCplusC Wi―Fiで高齢者見守り

2022年11月04日日刊工業新聞


おきでんCplusC(シープラスシー、沖縄県宜野湾市、仲程拓社長)は、近距離無線通信「Wi―Fi(ワイファイ)」を用いて高齢者の安否を検知する見守りサービスを展開する。室内に反射する電波のパターンを人工知能(AI)で解析し、プライバシーを守りつつ在宅や睡眠状態などを判別する。自治体とも連携し、持続的な社会づくりへの貢献を目指す。

同社は2021年5月に沖縄電力が設立した子会社。地場IT企業、ベンチャーキャピタルと共同出資した。社名はクリエイト(創造する)の頭文字Cにコミュニティーやケアといった別の「C」を足し合わせたいとの思いに由来する。上原康志ゼネラルマネージャーは「人間くさく、社会課題を解決する会社」と力を込める。

電波による位置や動きの解析技術を持つ米オリジンワイヤレスと覚書を交わし、サービスを構築する。想定するユーザーは家族と離れて暮らす独居の高齢者。国や県の事業の一環として沖縄で実証を進めている。

提供するのはWi―Fi電波を受発信するセンサー3台とタブレット端末のセット。睡眠検知用として寝室に親機と子機を各1台、リビングに活動検知用の子機1台を置く。「3台で大抵の家庭では検知可能になる」(上原氏)という。

室内に人がいない場合、電波の反射は一定だが、人が動くと乱れる。この乱れパターンをAIが判断し居住者の在/不在を判定する。また睡眠時には呼吸による胸の微妙な動きを検出。動きの違いでレム/ノンレム睡眠による眠りの質も分かる。カメラを使わずプライバシーを守れる。

利用者の状況は本人のタブレット端末や家族のスマートフォンで確認できる。家族は日常的な見守りのほか、健康問題の兆候の発見、在室のはずだが動作がないなど非常事態の検知につなげられる。

ただ、緊急時にすぐに家族が駆けつけられるとは限らない。そこで地域拠点の公民館や店舗(共同売店)などを核にした体制も併せて築く。9月末時点で沖縄県内12市町村と連携し、協働を通じて体制構築に取り組む。

健康や命を守る使い方だけでなく、行政との仕組みづくりにより孤独死の早期発見にも有用と見据える。「最悪の状況になっても少しでも早く見つけられる」と上原氏は意義を説明する。

テクノロジーがコミュニティーや行政と役割分担することで、効率的かつ持続的な社会システムをつくることに挑んでいる。