東京23区にも「限界集落」15カ所 高齢化する地域、誰が支える?

2022年10月15日朝日新聞


 65歳以上の高齢者が人口に占める割合が50%を超えた地域を「限界集落」と呼ぶ。過疎地の問題と思われがちだが、東京23区でも、町丁目レベルで分析すると、「限界集落」が15カ所あることがわかった。

 政府が5年ごとに行う国勢調査の結果を使って、23区の高齢化率の推移を町丁目単位で調べたところ、直近の2020年の調査で、約3千ある23区の町丁目のうち、限界集落は15カ所だった。

 全国の高齢化率の28.7%を上回る23区の町丁目は311カ所で、全体の1割を超えた。

 町丁目のなかに高齢者施設があれば、高齢化率は上がる。そうした特殊要因を排除するために、人口が500人以上の町丁目に限定すると、限界集落は9カ所だった。

 9カ所すべて、町の大部分を都営住宅が占めていた。

 全国の高齢化率が20年間で17.4%から28.7%と、11.3ポイントの上昇だったのに対し、これらの地域では際立って高齢化が進んでいる。

 最も高齢化率が高かったのは大田区東糀谷6丁目で、64%。00年の調査結果と比較すると、20年間で高齢化率が43.5ポイント上がっていた。

 次が世田谷区大蔵3丁目で60.9%(00年の高齢化率から32ポイント増)、北区桐ケ丘1丁目で58.9%(同23.3ポイント増)と続いた。

 都営住宅の建設ピークは、高度経済成長期まっただ中の1969年度。74年度までに建てられた団地がいまだに現役で、全体の約3割を占めているという。

 また、1990年代後半ごろから入居資格が厳格化され、1世帯の合計の所得が制限を超えると、社会人になった子どもたちは同居することができず、団地外に独立していった。

 東京都が2020年度末に調べたところ、都営住宅の名義人の69・2%が65歳以上で、これを単身入居者に限ると82・4%に上った。

 いわゆる「孤独死」も増えている。過去10年間で、都営住宅内での孤独死は400人台で推移していたが、17年以降上昇傾向で、20年度は755人だった。
 見守りや地域の支え合いが不可欠な状況を、誰が主体となって取り組むべきなのか。

 都の都営住宅経営部の担当者は「子育て支援を目的にした募集区分を設けているものの、都営住宅は基本的には住宅のセーフティーネット。世代などのバランスを考えて住人を選別することはできない」と説明する。

 さらに「都は都営住宅を作り、管理するのが役割。ソフトの部分は、行政としてできることを取り組んでいるが、誰がどこまでやるべきかは答えがない」と話す。