IoTと遠距離介護の最新事情 海外に住む娘が母親の見守りに家庭ロボット導入 自らステーションで充電するため高齢者側にストレスなし
2022年08月9日ZAKZAK
もし、読者の皆さんが高齢の親を地方に残して、遠距離介護をしているなら、このお盆休みには親の介護の在り方をもう一度見つめ直してはいかがか。というのも、筆者は介護系のライターをしながらも、先日、地方で一人暮らしをする母が自宅で転倒して骨折、もう少しのところで命を落とす危機を招いていたからだ。介護の人手が足りなければ、最近次々に登場しているIoT(モノのインターネット)やIT等の最新デバイスの助けを借りる方法もある。専門家に聞き、遠距離介護の課題とデバイス活用の最新事情を探る。
「コロナ禍で離れて住んでいる親になかなか会えない状況の中、離れて暮らす親の見守りにIoT・IT機器を導入した家庭が増えています」
そう話すのは、遠距離介護支援協会(本部・鳥取県)代表理事の神戸貴子さん。鳥取県に本部に置く同協会は、公的な介護保険では手の行き届かないサービスなどを全国に普及させたいと啓発活動を行っている。
神戸さんによると、遠距離介護でよく使われるようになった最新デバイスの1つに家庭用ロボットがある。家庭用ロボットは日々進化しており、人工知能(AI)を搭載するタイプでは、人間と簡単な会話ができ、カメラや温度センサーなどを装着し、自律走行もできる機種もある。
神戸さんは次のような導入事例を紹介する。
「70代後半で1人暮らしをする母親のために、海外に住む娘さんが介護用ロボットを導入しました。デイサービスから帰宅しても自宅に誰もいないと寂しいと言っていたため、ロボットで試すことにしました。このロボットは自律走行し動き回ることができたり、目が合うと寄ってきたりします。母親が帰宅するとそばにやってきます。ロボットの頭部には360度見渡せるカメラが付いており、娘さんは海外からでも母親や家の様子を見ているとのことです」
ロボットの充電は、自らが充電ステーションに移動して充電するため、高齢者だけの家でも電池切れになることはないという。
また、タブレットや監視カメラを活用している家庭もある。関西に住む80代の両親はデイサービスやヘルパーを利用しながら暮らしていたが、2人とも少し認知症が始まり徘徊するようになった。そこで東京に住む娘が、実家にタブレットを2台置き、両親の様子を見ながら話しかけるようにした。玄関には録画もできるカメラも設置した。これは同協会の関連団体「私の看護師さん」の有料サービスの一環だ。親が徘徊していることが分かると、家族から連絡が入り、その際は同協会のスタッフが捜しに行くそうだ。
神戸さんは「高齢者の見守りにIoT機器を使う場合、見守られる側の高齢者がスイッチのオンやオフ、充電もしなくて済むというストレスを感じない機器でないとうまく機能しません」と話す。
ただ、「いくら最新機器を使っても、それは万能ではなく、全てを見守ることができる保証はありません。郵便物がたまっていることに近所の人が気づくなどのケースもあります。親が元気なうちから地域の人とのコミュニケーションを大事にすることも必要です」と助言する。
遠距離介護をしている人は、この夏休みに帰省する機会があったら、最新機器を利用した介護方法や近所との付き合い方を見直したらどうだろうか。