やさしい見守り」広がりを 市が高齢者早期保護へ新事業 QRコード ラベル交付 住民が読み取り情報提供

2022年07月06日東海新報


認知症などで行方不明となった在宅高齢者らの早期保護や地域の見守り充実などにつなげようと、大船渡市は新たな情報共有システム「どこシル伝言板」の運用を始めた。衣服などに貼ったQRコードを住民らがスマートフォンで読み取ると、保護者に通知メールが届くシステム。地域内で声をかけ、気づかう助け合いの広がりも期待される。市保健福祉部地域包括ケア推進室では現在、登録を受け付けている。

気仙ではこれまで、早期発見・保護を目的に「気仙地区高齢者等SOSネットワークシステム」が組織され、事前の登録者が行方不明になった時などに捜索活動を行ってきた。市内では約20人が登録し、少しずつ増えている。

全国的にも、認知症の行方不明者が増加。現状では警察に届け出るのが一般的な対応だが、早期発見・保護には、住民らの迅速な目撃情報提供が欠かせない。

市内における認知症の高齢者は約2000人で、全高齢者の15%超を占める。

市では、IT技術を生かして対象者の安否情報を共有し、身元確認や家族への引き渡しをスムーズに進めようと、今月から新事業を本格化させた。

「どこシル伝言板」は、医薬品流通の東邦ホールディングス㈱(東京都)が展開するサービス。在宅で認知症の診断がある人や、認知症による徘徊行動などがある人が対象で、利用申請書などを市に提出すると、QRコードが記されたシールや、アイロンで貼ることができるラベル計30枚が交付される。

事前に、シールやラベルを日常的に着用する服やつえなどに貼り付けておく。家族が気づかないうちに外出するなどして行方不明になった際、近くにいた住民らがスマートフォンでQRコードを読み取ると、登録した保護者に通知メールが届く。

スマートフォンでは、事前にアプリをダウンロードする必要がなく、QRコードを読み取ると発見時に注意すべきことなどが確認できる。「右耳が遠いので左耳から話しかけてほしい」「震えがあったら低血糖の可能性があるので、左胸ポケットに入れているあめをなめるよう勧めてほしい」など、登録時に基づく情報が示される。

発見時に迎えに行くことが可能で、市内に住所がある家族らが申請者となり、申し込み時に連絡先などを登録。登録料は無料で、市では当面、50人程度の利用を見据える。

徘徊が懸念される高齢者の家族らへの利用周知とともに、一般住民にも事業導入を知らせながら、安全・安心のまちづくりなどにつなげたい考え。同推進室では「地域内で気になる高齢者に声をかけるきっかけにもなり、やさしい見守りが広がってほしい」と、期待を込める。

申し込み、問い合わせは、盛町・市総合福祉センター内の同推進室(℡26・2943)へ。