四條畷市でスマホを使った高齢者向け見守り、キャラクター使い対話意欲向上
2022年06月30日新・公民連携最前線
大阪府四條畷市と奈良先端科学技術大学院大学は、高齢者の健康づくり及び介護予防を目指して、スマートフォンのアプリを使い日常的な見守り・ヘルスケアを行う実証実験とスマホ使い方教室を実施し、その報告書をまとめた。実証実験参加者からは「出来れば続けてほしい」「非常に良い機会になった」といったスマホによる対話意欲の向上がうかがえる意見や感想が寄せられた。
四條畷市は2019年度(令和元年度)をスマートシティ元年と位置付け、AI(人工知能)・IoT(あらゆるものをネットでつなぐ)技術を活用し、地域の課題解消を進めている。その中で、高齢者のデジタルへの接触機会を増やし、その価値を実感できるようにして「誰一人取り残さない」ための取り組みや、高齢者のデジタル・リテラシー向上の取り組みが必要とされていた。奈良先端大からスマホを用いた高齢者向け見守り・ヘルスケアの実証実験とスマホ使い方教室の提案があり、連携して実証実験を行うことにした。
実証実験は四條畷市立老人福祉センター「楠風荘」で実施し、近隣で暮らすスマホ所有者を対象とした。実施期間は2022年2月1日から3月25日。募集予定人数は当初30人だったが、最終的に男性11人、女性36人の合計47人が参加した。参加者の年齢は66歳から89歳で、平均年齢は76歳だった。
募集チラシ及びポスターで参加を募り、奈良先端大から対象者へ研究の目的・方法などを説明し、趣旨に同意した人を参加者とした。最初に参加者のスマホにLINEを使い対話アプリ(ぐうちゃん)と友だち登録をした。
見守り・ヘルスケアは、LINE上で友だちとなった「ぐうちゃん」と参加者が対話方式で進める。ぐうちゃんが質問を投げかけ、参加者が4つの選択肢で答えていく。キャラクターを使うのは、社会的孤立者や高齢者などの見守りや自立支援、ヘルスケアを目的とした生活パートナーとしての利用が期待できるからと奈良先端大は考えている。
またLINEでの対話も行った。ぐうちゃんの問いかけに対して、参加者が文字を入力して対話を進めていく。
対話の質問内容により、参加者の活動情報や体調を確認することができるようになっている。たとえば、「どこにお出かけした?」と質問すれば日常の活動状況を確認できるし、「楽しかった?」と質問すれば心理状況を把握することができる。
こうした対話を進めるのと並行して、奈良先端大から先生が楠風荘に来所した時にスマホ操作などの困りごとについて個別相談できる「スマートフォン使い方教室」を合計24回開催した。延べ参加人数は103人だった。
実証実験の参加者からは「コンピューターも習いたい」「こういう機会があるのが良い。利用範囲が広がった」といったスマホ・リテラシーの向上がうかがえるコメントのほか、「先生話しやすい、気さくで、上目線でないから大好き」といったスマホ使い方教室の先生に対する好意的な感想もあった。
今回の実証実験では、アプリによる対話とLINEで友だちとなった「ぐうちゃん」によってキャラクターへの親和性や対話意欲の向上のほか、対話から活動状況や心理状況が確認できたという。またスマホ使い方教室を複数回開催したことから講師への親近感を持つ人が多かったため、四條畷市は今後も機会があれば関係者と連携しスマホ使い方教室を実施していきたいとしている。