「いつも思ってる!」大切な人に気持ちを届ける「ネット鳩時計」を衝動買い

2022年04月28日ASCII.jp


 我が国の総人口12522万人(2021年9月15日現在推計)に占める65歳以上の高齢者人口は、3640万人と、前年(3618万人)に比べ22万人増加し過去最多となった。総人口に占める高齢者の割合も29.1%と過去最高になり4人に1人以上が高齢者となった。高齢者に限らず、戦後「核家族」という言葉が登場して以来、2020年の日本では一人暮らし世帯が全世帯の38%を占めている。

 そんな日本では、スマホの高所有率と安価なインターネット回線の普及で当然の様に「見守り系」のIoTガジェットが毎日のように登場してきている。リアルな画像が簡単に見れるP2P系のインターネットカメラや冷蔵庫やドアなどに取り付ける動体センサー系、位置情報を適時発信するGPS系製品などがそれらの代表製品だろう。

 しかし若年層から高齢者まで、安価で使いやすいテクノロジーで実現可能になったとはいえ、遠隔から生活をのぞき込まれることや、たとえ家族とは言え日々の行動やプライバシーがすべて通知されてしまうことには抵抗がある人が多いのは当然だろう。

 そんなテクノロジーで何でも実現できてしまう時代に、人と人の気まぐれなコミュニケーションしたいという気持ちを極めてアナログ的に実現できて人に寄り添う気持ちがそっと伝わる見守り系IoTガジェットを衝動買いした。

 今週ご紹介する商品は「OQTA HATO」(オクタ・ハト)という「鳩時計コミュニケーター」だ。商品名の「OQTA」はオクタゴン(八角形)が由来らしい。関西人の筆者は当初「送った」のシャレかと思ってしまった。実際は「大切な人」と常日頃その人を大切に思う最大8人で構成されるコミュニケーションの輪なのだ。

スマホアプリのボタンをタップすると大切な人のところに置いた鳩時計が「ポッポ~」と鳴く

 ふと大切な人のことを思い出した時、スマートフォンアプリのボタンをタップするだけで、大切な人のところに置いてある鳩時計が「ポッポ~」と鳴く。その音を聴いた人は 「今、誰かが私を思ってくれている」ということを感じるだけのシンプルな仕組みなのだ。普通の鳩時計と異なるところは、時報として鳩が鳴かないことだろう。鳩を鳴かせるのは、人の気持ちだ。

 OQTA HATOには簡単な取説と専用ACアダプターが付属する。OQTA本体には電動のアナログ時計が仕組まれており、背面の時刻調整ツマミで時刻合わせのできるごく普通の鳩時計だ。置時計としても掛け時計としても使えるフック穴が付いている。置き時計として使うなら付属のクッションゴムの貼り付けを忘れないようにしたい。

 OQTA HATOの設置・設定には事前にスマホにアプリ「OQTA」をダウンロード、インストールすることが必要だ。筆者はメインスマホであるGoogle Pixel 6 ProにGoogle Playよりダウンロードして設定を開始した。

 設定作業に先立って、スマホ画面には数ページのOQTA HATOでできることのストーリー解説が表示される。思い立ったときにスマホアプリをタップすることで、気持ちが鳩時計の音になって遠方にいる大事な人に届くイメージを表している。

まずスマホアプリ「OQTA」を設定

 スマホアプリであるOQTAの設定は、他の多くのクラウドサービスアプリとよく似ている。まずはユーザーのアカウント登録だ。昨今の2段階認証を経てユーザーアカウントが発効される。

 アカウントは、お好みの自分の画像やアプリ内で使用されるニックネームなどを自由に設定できる。アカウントの設定作業が終われば、続いて今回のOQTA HATOデバイスをアカウントに紐付けする作業だ。この設定が終われば、OQTA HATOは宅内のWi-Fiルータを介してインターネットにつながるようになる。

 アプリ画面の指示に従って、OQTA HATOに付属のACアダプターをつなぎ電源をオンする。続いて背面の時刻調整つまみのすぐ上にあるSETボタンを押し、OQTA HATOの前面の12時位置のすぐ上にあるLEDライトが2回点滅することを確認する。

 スマホアプリ上には、OQTA HATOデバイスを接続するWi-Fiルーターの一覧が表示されるので、目的のWI-FiルーターのSSIDをタップして選択、パスワードを入力すればすぐに接続する。これでデバイスの設定は終了だ。

次は大事な人を囲むサークルを作る

 続いて、OQTA HATOを設置する大事な人を囲む新規サークルを作る。筆者はおばあちゃんを中心とした「T教授のおばあちゃんのサークル」という名前で、画像もセットして作った。これだけでOQTAアプリのボタンをタップするだけで、すぐにT教授のおばあちゃん宅に設置したOQTA HATOが「ポッポ~」と鳴いてくれる。

 サークルには様々な記念日を設定することもできる。設定した記念日はその日になると、タップ画面上に表示される。サークルには最大8人まで、メッセージを送ることのできる人を追加可能だ。今回は2人の家族をサークルの新メンバーとして追加登録してみた。

 サークルメンバーの追加は、まだ誰もアサインされていないサークルの人アイコンをタップすることで、QRコードが表示され、コードを共有設定のLINEやメールで追加予定メンバー宛に送付し、当人が確認後、サークル参加を選択することで追加される。

 通常のサークルによる基本的なコミュニケーションは一切追加使用料金は不要だが、月300円のプレミアム会員になると、タップの履歴が無制限に参照できたり、記念日登録の数が無制限になるようだ。

 サークルに招待、参加したメンバーのアプリ画面も基本的にアカウントユーザーと同様に記念日登録やWi-Fiネットワークの切り替え、デバイスの交換などがサポートされている。もちろんサークルからの離脱も選択可能だ。

自分以外の誰が送ったのか想像すると楽しい「ログ機能」

 ログは、メンバーがいつアプリをタップして大事な人にポッポ~という音声メッセージを送ったのか、参照することができる。サークルのメンバーは自分の送信ログだけを見ることができ、開設者のオーナーはすべてのメンバーの投稿を見ることができる。私を含む家族3人のメンバーは、時々ログを見ては自分以外の誰が送ったのか想像して楽しんでいる。

 ログもそうだが、ポッポ~って音を聞く側も、一体メンバーの誰が送ってきたメッセージなのか区別や判別はまったくつかない。理論的にはできないわけはないので、これは敢えてやらずに「今のは一体誰だろう?」って想像する方が楽しいからだろう。

 我が家の例でも、サークルメンバーの家族3人がたまたまほぼ同じ時間帯にポッポ~メッセージを送ったとしても、ちょうどその時間に「T教授のおばあちゃん」がOQTA HATOの鳴き声が聞こえる範囲に居るとは限らない。

 ポッポ~となった時には、あいにく外に出かけているか、偶然お風呂に入っているかもしれない。OQTA HATOはそんな義務感や責任感が伴うシステムではなく、必ず相手に届く保証などないシステムだ。

 LINEの様に既読後10分たっても返信がない……と騒ぐSNS的なシステムではなく、極めて緩い制約の少ないコミュニケーションなのだ。たまたま縁があれば聞ける……ので良いとの判断なのだ。

 もちろん、ポッポ~と音声メッセージを受け取った側が受信したことを送り主に連絡したり、その意思表示をする手段もまったく用意されていない。あくまで、メンバーから大事な人への「気にかけてるよ!」という一方通行のメッセージなのだ。

緩いコミュニケーションが「ゆったりとして楽しい」

 筆者は、OQTA HANAの「しろ」モデルを衝動買いしたが、同じデザインで自然なウッドな雰囲気の「もく」もあるので、大切な人の好みやインテリに合わせて選択すれば良いだろう。

 2021年の12月より約4ヵ月もの間OQTA HATOを使ってみた感想は、「ゆったりとして楽しい」という感覚だ。唯一気になったのは、自分にとって「大切な人」がスマホやWi-Fiルータなどの知識に乏しい人の場合、設定時が問題だ。訪問サポートサービスもあるようなので、最終的には大丈夫な気もするが、Wi-Fiモデルではなく、なぜか販売終了になってしまった3GモデルやLTEモデルがあれば良いのに……と思ってしまった。

 令和時代の見守りは、ウッカリすればリアルタイム性やタイトでレスポンスを要求するIoT製品が多い中、OQTA HATOは緩いコミュニケーションをベースにした「気配を感じる」しなやかなサービスだ。気の重いことの多い昨今だが、OQTA HATOで無理せずぼちぼちいくのはどうだろうか!?