爆発的成長の次なるフロンティアはエイジテック、国内外の動向をチェック

2022年04月14日BRIDGE


スタートアップ業界の担い手は比較的若い世代が多いため、シニアマーケットと言われてもいまいちピンとこない・・・という方が多いかもしれません。実はシニアマーケットは、高齢化の進む先進国を中心に大きな注目を集める巨大成長市場なのです。

エイジテック(AgeTech)は、シニア世代の生活をより豊かにする様々なテクノロジーやサービス、それらを開発・提供するスタートアップのことで、エイジテックの動向にも年々関心が高まっています。デジタル化が遅れていると言われるシニアマーケットを変えるエイジテックは、爆発的成長を遂げたフィンテックなどに続く次なるフロンティアと考えられています。

なぜ今エイジテック熱が高まっているのか、海外スタートアップの動向や事例、日本の状況などを俯瞰し、この大きな波をとらえるヒントを得たいと思います。Let’s strive to know “AgeTech”!

世界で進む高齢化: 2060年、先進国の高齢者人口比率は3割へ

高齢化といえば日本、という印象を持ちますが、実際には日本以外の多くの国でも高齢化は進んでいます。世界的な平均寿命の延伸と出生率の低下を受け、欧米・アジア各国で高齢者人口の比率が高まっているのです。国際連合の統計調査によると、2015年、世界の総人口に占める高齢者人口比率は約8%ですが、2060年には約18%にまで増加します。

2060年の高齢者人口比率は、先進地域では3割近くにのぼり、開発途上地域でも2割弱の水準にまで増加する見込みです。世界の高齢化率の推移をみると、2060年までにドイツやフランスでは3割程度、中国は日本を上回り4割を超えると見られています。

なぜ今エイジテックなのか? エイジテックが加速する5つのドライバー

近年、エイジテックに熱視線が集まるのは、高齢化以外にも様々な要因があります。エイジテックの成長が加速するドライバーとして、(1)センサー、AI、VR、ロボットなどのテクノロジーの進化、(2)高齢者の経済規模試算などによる高齢化社会への注目度上昇、(3)コロナウイルスのパンデミックによる後押し、(4)”成熟”起業家によるエイジテックスタートアップの増加、(5)ビッグテックなどによるエイジテックへの積極的な参入などが挙げられます。

2019年のForbesの記事では、米国の高齢者経済は2016年度に7.6兆ドル(米国GDPの4割に相当)、欧州の高齢者経済は2015年度に約4兆ドル(欧州GDPの2割に相当)と見積もられていることに触れながら、巨大市場であるもののデジタルイノベーションが遅れた分野であるとし、エイジテックの大きな成長余地について解説をしています。

また、2022年1月に米国ラスベガスで開催された国際的なテックイベント「CES 2022」でも、メディカルヘルスなどエイジテック領域の盛り上がりが報告されています。(参考: Business Insider 海外イベントから分析する「2022年テクノロジー流行」)。

エイジテックスタートアップの調達動向: デジタルヘルスケア分野は記録的な年に

エイジテックには高齢者の自立的で豊かな暮らしを支える幅広い商品・サービスが含まれています。例として、見守りや遠隔介護のためのデバイス、デジタル治療やオンライン薬局・診療、介護補助のためのロボット、移動・買い物などの生活支援サービス、健康食品や機能性医療、老後の資産形成や相続のための金融サービス、他にも高齢者向け医療・介護事業を支えるサービスなどが挙げられます。

エイジテックの大きな領域を占めるデジタルヘルスについて、スタートアップによる資金調達の最新動向を見ていきましょう。CB insightsの「State of Digital Health Global 2021」によると、グローバルでのデジタルヘルスの資金調達額は2021年に572億ドルに達しました。2020年に比べ79パーセント増加し、過去最高を記録しています。

100百万ドル以上の調達となるメガラウンドは154件と昨年度に比べほぼ倍増し、資金調達額の平均値も25百万ドルと過去最高でした。ユニコーンの数は2021年に13社増加し、合計85社になりました。増加した13社のうち8割が米国を拠点としています。

デジタルヘルス領域のスタートアップに積極的に投資する投資家は、VCのGeneral CatalystやAndreesen Horowitz、CVCのGoogle Ventures、そして投資会社のTiger Global Managementなどが挙げられます。2021年はスタートアップのエグジットも極めて活発で、M&Aが574件(前年度比176件増加)、IPOが77件(同39件増加)、SPACが17件(同16件増加)となりました。