街を「スマート」に デジタル化に膨らむ期待

2022年04月06日朝日新聞

 山形県長井市が複数のデジタル化事業に取り組んでいる。人口減を見据え、3月末には日用品を扱う無人店舗をオープン。コロナ下で生活や働き方の見直しが広がるなか、全市を挙げて誰もが便利に暮らせるスマートシティーを目指す。

 市役所と市東部の伊佐沢地区の2カ所に3月30日、無人店舗「スマートストア」がオープンした。

 店内には日用品や食品など約100品目が並ぶ。スマホに専用のアプリを入れ、QRコードを表示して入り口のゲートにタッチ。購入する商品のバーコードを読み取り、アプリを使ってセルフレジで支払う流れだ。

 アプリの登録を息子に手伝ってもらい、スムーズに買い物を済ませた地区の鈴木真知子さん(71)は、「初めての人は難しいかも。しばらくは詳しい人にいて欲しい」と話した。

 無人店舗の購入データが蓄積されれば、商品の充実や仕入れの効率化に役立てることができる。今後、身近な店舗が減った場合には「買い物難民」の解消につながるとの期待もある。

 市がデジタル化を進めるのは、地方と都会の格差を埋めるためだ。コロナ下でテレワークやサテライトオフィスなどが浸透すれば、職場に縛られずにすむ。内谷重治市長は「長井市に住みながら、世界を相手に仕事ができる街にする」と意気込む。

 市は2020年7月、NTT東日本の社員を「デジタル推進室長」に据えて計画づくりに取り組んできた。同年夏には市の成人式をオンラインで開催し、21年2~3月には電子地域通貨「ながいコイン」の実証実験も実施。昨年度に内閣府の地方創生推進交付金事業に採択され、約8億2千万円の総事業費で5年かけて様々な事業に取り組む。

 今年3月中旬には、子ども見守り用のGPS端末を配布した。市内の181人が希望し、保護者のスマホで子どもの現在地を常に確認できる。AI(人工知能)が行動パターンを学習し、予測からはずれた行動をとった場合には通知する。

 端末代は無料で、保護者の負担は通信費だけ。受け取った一人は「キッズ携帯を買わなくて済むし、何より安心できます」と喜んだ。

 さらに、子どもの位置情報と市内の河川20カ所で監視するリアルタイムの水位データを組み合わせれば、未然に危険を防ぐこともできる。

 課題は「デジタル弱者」とされる高齢者の参加だ。市は昨年12月、団体や企業などでつくる「推進協議会」を設置。意見を取り入れつつ、デジタル教室も開きながら操作に慣れてもらう予定だ。