高齢化と人口減、ITで防げ 豊能町と大阪公立大がタッグ

2022年03月16日産経新聞

 
高齢化と人口減少が進む大阪府豊能(とよの)町は、4月に開学する大阪公立大と連携し、先端技術を使った都市モデル「スマートシティー」実現のための事業を本格化させる。布石として、大阪公立大の母体となる大阪市立大の学生らがスマートフォン用アプリの制作を始めた。長期的には町内のIT化とアプリ開発を通じ、生活環境を改善して人口流出に歯止めをかける狙いだ。

スマホアプリ制作

「ダブルクリックしてください。カチッ、カチッですね」

2月、豊能町の商業施設の一室で開かれた講習会。市立大の学生や地元の高齢者ら計約20人が講師の指示に従い、パソコンやタブレットを操作していた。

参加者は全3回の講習を通じ、プログラミング言語を使わない「ノーコード」という手法で、買い物忘れを防ぐためのスマホ用アプリを制作した。市立大工学部3年の西野元晴さん(21)は「完成度の高いアプリができた。自分が学んだプログラミングの知識も使い、町に人が集まる仕掛けをつくってみたい」と笑顔をみせた。

講習会は、同町で昨年11月に始まった「スマートシティプロジェクト」の一環。ITに不慣れな高齢者向けにスマホの使い方から始め、これまで初級のアプリ制作を含めて40回以上開いた。最終的に住民自ら身近な悩みをITで解決できるようになるのが目標だ。

プロジェクトの背景には、人口減少と高齢化がある。1人の女性が産む子供の数の平均を示す合計特殊出生率は0・84人で、全国の市町村でワースト。人口は平成8年の約2万7千人をピークに減少し、令和2年で1万9千人余り。高齢者が占める割合(高齢化率)は府内43市町村で最も高い47・5%で、国内全体の28・6%を上回る。

同町の松本真由美まちづくり調整監は「若者は大学進学を機に町を出て、親世代の高齢夫婦だけが残る。このまま何も手を打たなければ、人口は減り続ける」と危機感を募らせる。

美しい棚田が有名な同町だが、10年以上前から高齢を理由に農業をやめる世帯が続出。人の手が入らない「耕作放棄地」が増え、荒廃した土地も珍しくない。

町内は坂道が多いわりにバスの運行本数は少なく、高齢者が外出する際は自家用車が頼りだ。松本さんは「高齢者の大半は車を運転できなくなったらどうするか、頭を悩ませている。自力で歩けるように健康寿命の延伸にも関心がある」と説明し、「スマートシティー化で高齢者に優しく、子育てしやすい町をつくり、人口減少を少しでも食い止めたい」と訴える。

企業約40社が参画

プロジェクトに参画する企業約40社などでつくる協議会は今年2月、サービス提供のプラットフォームとなる独自アプリ「とよのんコンシェルジュ」の運用を始めた。現在はタクシーの配車などに限られるが、今後は高齢者の健康管理や買い物代行、児童生徒の見守りなどに拡充したい考え。