水道スマートメーター、高齢者見守り 自治体で導入進む

2022年01月20日日経新聞

 

各家庭などの水道利用量が遠隔で自動的に把握できる「スマートメーター」を導入する自治体が増えている。訪問による検針をなくすことで業務負担が減るほか、高齢者宅の使用状況を家族に伝える見守りサービスとしても活用。新型コロナウイルス禍で親族間の対面機会が減る中、コミュニケーションの増加につながる効果も期待される。

「使用開始を確認しました」。見守られる側の高齢者が朝に一定量の水道を使うと、登録している家族らに「元気メール」が届く。長野県坂城町が2017年から運用している見守りの仕組みだ。

対象世帯に専用の水道メーターや通信装置を設置しデータを集約。2時間以上使用が続き漏水の可能性がある時や、一定時間以上利用がない場合は「異変メール」を配信する。現在は30人以上の高齢者が登録している。

坂城町の担当者は「コスト面や利便性など改善の余地はあるが、メールをきっかけに家族間でのやりとりが増えた、という声もある」と話す。

ライフラインを活用した見守りサービスは、電力会社も電気を使って進めている。水道の場合は自治体などが導入するため、役所の福祉部門とも連携できるのが特徴だ。
沖縄県南城市が昨年4月から約50世帯を対象に始めた実証実験では、市内で増える独り暮らしの高齢者のサポートでスマートメーターに着目。専用アプリで1時間ごとの使用量が確認でき、不規則な使い方があれば離れて暮らす家族にメールが送られる。身寄りがなければ市地域包括支援センターが受信し、対応に当たる。

大規模な導入を目指すのが東京都だ。22年度から3年間で約13万の企業や家庭にスマートメーターを設置する方針で、連動した専用アプリを制作中。30年代には約780万ある都内の全契約先への拡大を計画する。東京五輪・パラリンピックの選手村の一部でも試験運用した。

都は、訪問して使用量を調べる検針員の人手不足解消の切り札としても期待を寄せる。担当者は「デジタルを使って作業を効率化しながら、サービスも向上させる」と強調。米サンフランシスコやロンドンなどで既に普及しており、漏水対策のほか節水意識向上にも効果が出ているという。

厚生労働省も水道分野での先端技術利用を推進しており、担当者は「スマートメーターが他にどんな場面で役立つかの検討も含め、モデル事業などを後押ししていきたい」と話している。