高山商事、安価な自動駆けつけ介護ロボット「SOWAN」 ~5年間運用で「時給88円」から 

2019年11月18日PC Watch

 

 介護サポート事業を手掛ける株式会社高山商事と、サービスロボットベンチャーの株式会社テムザックは2019年11月18日、自動駆けつけ介護ロボット「SOWAN(ソワン)」を開発したと発表し、東京・赤坂でロボットの実演を交えた記者会見を行なった。巡回見守り/異常時の駆けつけや情報通知を行なうロボットで高山商事にて受注受付を開始する。納入予定は2020年6月に100台。早期に3,000台の販売を目指す。 

 基本プランはロボット本体のほか、活動量計、タブレット、自動引き戸装置、制御PC、活動量計管理PC、スマートフォンからなる。月額リース料金は月々66,000円で、5年間使用するとすれば、居室10部屋基準の購入費用は時給換算すると88円になるという。基本セットだけで巡回、見守りなどができる。顔認証による声かけや自動充電、転倒者検知などはオプションとなる。オプションを全部つけた場合は145,000円の予定。

自動駆けつけ介護ロボット「SOWAN」

 「SOWAN」は介護職員の負担軽減と利用者の安心を目的として開発されたロボット。とくに負担の大きい夜間業務をサポートすることを目的とし、高山商事が企画し、1年前にテムザックに声をかけて開発した。住居型老人ホームで検証を重ねた。 

 SLAM(自己位置推定と地図作成を同時に行なう技術)によって施設内を定刻巡回し、夜間にひとり歩きする高齢者を見つけると、個人を顔認識して声がけする(オプション機能)。活動量を計測するウェアラブルデバイスと専用サーバーと連動することで、個人の健康状態を見守ったり、普段とは異なる活動が見られた場合は、居室まで駆けつけて、職員がロボットごしに状況を確認することができる。そのときの様子を録画することも可能。

 また普通の引き戸を後付けで自動ドアにできる自動引き戸開閉装置「ポルテア」と連動し、ソワンとの通信で部屋の出入りが可能。

 ロボットは人型を模した「タイプ1」と、よりシンプルな形状の「タイプ2」の2タイプ。サイズは幅と奥行きが400×400mm。高さはそれぞれ1,365mm、1,360mm。機能自体はどちらも同じ。

 重量は60kg(24V/40Ahの鉛蓄バッテリ含む)。センサーは360度全方位LiDAR、RGBカメラなど。カメラは約130万画素のナイトビジョンを搭載。そのほかスピーカーやマイクも搭載している。充電時間は約7時間。稼働時間は約20時間。走行速度は0.9km/h。

介護従事者のパートナーになるロボット


 高山商事 代表取締役の高山堅次氏は、「SOWAN」はこれまで難しかった自動巡回を介護業界でははじめて搭載した製品だと紹介した。高山商事は2010年設立。介護関連のさまざまな事業を行なっている。

 介護は、実際に介護の手が必要になるまでは多くの人にとって漠然とした対象だが、一度必要になると不可欠のものとなってしまう。これまで各業種が参入しており、介護支援事業所など関連施設が多数できている。だが現在、法改正がたび重なり、収益の低下がおき、人手不足や介護事故なども発生している。 

 高山氏は、人手不足の原因は「業務におけるストレス」にあると語った。現場では大量かつ多岐にわたる仕事があり、とくに入所者からのコールへの対応がストレスにつながっているという。人材流出を防ぐため、高い水準の給与を提供するには人件費が必要となる。

 一方、有効求人倍率の高まりに見られるように人手自体が不足しており、その結果、閉鎖に追い込まれる施設も少なくない。さらに今後は高齢化が加速し、人材確保は困難になる。制度見直しや働き方改革による見直しも進んでいるが、根本的には人口動態に原因があり、解決する見込みはない。

 今回開発した「SOWAN」はそのためのソリューションの1つで、巡回ルート上でうずくまっていたり転倒検知したり、とくに見守りが必要な人にはバイタルセンサーをつけて見守ることができる。通常であれば人が行なう業務をロボットがやってくれる。「助っ人のような製品だ」と述べた。巡回型ロボットを開発した理由は「必要ではあるが、必ずしも人がやらなくてもいい業務があるのではないか」と考えた結果だったという。

 ポイントは低価格とシンプルな操作性。導入コストが低く、誰でも簡単に操作できる一方、先端技術を搭載したと語った。介護に携わる人たちのパートナーになってくれるロボットであり、人の手がさらに愛に溢れたものになるように、その一助となってくれるロボットだと述べた。


人型ロボットならでは、夜間の巡回だけでない効果も

 監視カメラとの違いは何かと質問された株式会社高山商事 相談役の春日井茂氏は、「常時の監視カメラは精神的ストレスがある。ロボットが駆けつけたときのみ見るほうがいい」と述べた。

 また実証実験では、ロボット導入によって現場の負荷が減ることで、スタッフの笑顔が増えたという。実証実験中には、待機状態のロボットに対して、認知症の入居者が話しかけるといったアクションもあったという。またスタッフに対する顔の認識度も上がったように感じたと述べた。
 
 高山氏は「定期巡回や見守りは1人あたり5分くらいのサービスになる。5分が10人分となると50分。一晩六回となると3時間くらい。そのくらい夜間の労働時間が空けばコストカットにつながる」と語った。今回のロボットについても、介護現場の特性を考えて、まずコストから考えていったという。

 ロボットの低価格化についは、ロボットを開発・製造する株式会社テムザック 執行役員/企画本部本部長の川久保勇次氏が「部品点数をなるべく少なくして、汎用品を選定した。台湾の子会社と協力して海外で生産することで低価格化を実現した」と答えた。もちろん、3,000台を生産するという高山商事の決断もコストに影響している。 

 実証実験中には巡回機能の検証や、夜間でも顔認識できるカメラの選定などを行なった。また、ロボットの形状自体についても実際に現場においてみたことからの発見があったという。

 ロボットのメインの運用は夜間の巡回だったため、当初はあまり個性のないシンプルなデザインのほうが良いと考えていたが、実際に実験をすると、昼間においてあるロボットに接する人たちが、どんどんロボットとフレンドリーになってきて、前述のような気持ち自体がポジティブになる結果も得られたので、昼間自体も活動させられる、市場も増えるかもしれないと感じたという。