【続・長生きは本当に幸せか?】日本が迎える「多死時代」 年々増える「孤独死」という大問題

2019年08月22日zakzak

 
 2025年、団塊世代の全員が75歳(後期高齢者)を超えると、年間死亡者数が激増し、日本は「多死時代」を迎えます。「看取り難民」の激増が懸念されていますがもう一つ、「孤独死」も大問題となっています。

 孤独死といっても定義はありません。誰にも看取られずに1人で息を引き取り、周囲に気づかれず放置されていたというケースを孤独死としています。現在、年間3万人以上が孤独死していると推定されています。

 孤独死に至るのは、ほとんどが1人暮らしの高齢者です。1人暮らしの高齢者は、15年の国勢調査によると、男性約192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13・3%、女性21・1%となっています。この方々が、孤独死予備軍と言えます。

 孤独死の原因としては、心筋梗塞や脳出血などの突発性の疾患が挙げられますが、肺炎、肝硬変などの悪化によって餓死するケース、室内で転倒・骨折して助けを呼べないまま衰弱死するケースなどがあります。

 孤独死が問題なのは、発見された場合、通常は警察による検視が行われ「死体検案書」が作成されるなど行政処理が大変なことです。身寄りがない人は、すべて市町村が死後処理を行います。

 遺族がいるケースでは、こうした死後処理に加え、大きな金銭的負担がかかります。悪徳業者が「特殊清掃」として高額な費用を請求してくる例も報告されています。また、賃貸住宅に居住していた場合、賃貸人や管理会社が高額な補償金を請求してくることがあります。孤独死があった部屋では、賃料を下げざるをえないからです。

 また、本人は命をとりとめる可能性もあったので、その辛さは想像を超えます。つまり、孤独死はできる限り避けなければならないのです。しかし、これといった決め手はありません。

 なぜなら、1人暮らしの高齢者は、日々、地域社会との関係を薄めていくからです。各種調査によると、いざというときは「子供を頼りにしたい」という方が圧倒的ですが、子供も高齢化してしまうと、「老老介護」という壁があります。それでも子供がいれば救われます。

 しかし、厚労省などに正確な統計はないのですが、男女とも「生涯無子率」は推計で3割に達しているので、1人暮らしの高齢者で子供がいない人は全体の3割はいると思われます。

 このような現状を見ると、孤独死をしないためには、家族がいる人は家族を含めて地域社会と、いない人は地域社会と定期的なつながりを確保するほかありません。

 内閣府の「高齢社会白書」によると、60歳以上の高齢者全体で、毎日会話をしている人が9割を超えているのに対して、1人暮らしの男性は約3割、女性は約2割が、2~3日に一度以下となっています。さらに、近所付き合いでは、「つきあいがほとんどない」と回答した女性は1割以下なのに対して、男性は2割近くもいます。

 こういう方に対して、介護や医療側ができるのは、その方が介護や医療が必要になったときからでしかありません。ヘルパーや訪問医が訪問するようになれば、少なくとも孤独死は防げます。

 しかし、昨日まで元気だった方が、脳卒中で倒れたなどのケースはどうしようもないのです。

 自身がそうならないためにできることは、健康を保つことを除けば、たった2つしかありません。1つは、死亡診断書を書いてくれるかかりつけ医を持つこと。もう1つは、毎日、一度は連絡をとれるか、とってくれる人がいること。ヘルパーでも家族でもかまいません。なにも地域社会と密接に関わりを持つ必要はありません。最低誰か1人でいいのです。