AIで通話を解析し特殊詐欺を防ぐ? NTTが実証実験
2019年08月30日マイナビニュース
NTTグループは8月29日、特殊詐欺解析AIを用いて、発信・着信した電話の会話内容が詐欺かどうかを解析する実証実験を30日から開始すると発表。2020年秋以降の実用化を目指す。NTT、NTT東日本/西日本、NTTコミュニケーションズが持つ技術とサービスを活用し、安心して電話に出ることができない状況の改善に取り組む。過疎化が進み単身の高齢者が多い地方などでの導入が期待されているという。
巧妙化する高齢者を狙った特殊詐欺
振り込め詐欺やオレオレ詐欺といった「特殊詐欺」の手口は日々巧妙化、複雑化が進み、大きな社会問題となっている。警察庁が発表している平成30年度の認知件数は16,496件、被害額は363.9億円にのぼり、依然高い水準で推移しているのが現状だ。
その手口の主な経路は家庭に設置されている固定電話であり、被害者は高齢者に集中している。これまでも様々な対策が講じられてきたが、被害は金銭面にとどまらず人命に関わる事件も報告されており、電話に出ることに対して不安を感じている方も多いだろう。
安心して固定電話を利用できるように
事態を重く見たNTTグループは、グループが有する技術やサービスを活かした特殊詐欺解析AIを開発。50自治体の個人宅など約120名での実証実験を8月30日より進めるとともに、2020年秋以降の実用化を目指す。
NTT東日本の一ノ瀬勝美氏は、「特殊詐欺の被害者の多くは高齢者です。ご家族やご友人とのコミュニケーションを支えるはずの大切な固定電話が犯罪に利用されている現状は、NTTグループにとっても、長年携わってきた私自身も本当に心苦しいものであり、なんとか対策を講じたいと考えておりました」と、NTTグループが特殊詐欺の対策に取り組むその思いについて語った。
AIが通話内容を解析し本人や親族に注意喚起
市販の固定電話機によるこれまでの特殊詐欺対策といえば、着信時に「防犯のために録音を行います」といったガイダンスを行い、通話の録音を行う機能が知られている。NTTグループが講じた対策は通話の録音を行う点では同じだが、その内容をAIによって解析し特殊詐欺判定を行うというもの。
「特殊詐欺対策アダプタ」を用いて通話を録音し、その音声データをクラウド上に送信。音声はテキストに変換され、特殊詐欺解析AIが通話中の言葉や文脈、表現を解析。特殊詐欺と判断されたら、本人や親族などに音声ガイダンスとEメールで注意を喚起する仕組みだ。発信時、着信時の両方で機能し、通話中の場合は後からリダイヤルされる。
プライバシーを考慮し、クラウド上に送信された音声データは解析後に破棄され、NTTでは解析結果のみが保存される。実証実験では発着信すべての通話が録音、送信されるが、「電話帳に登録してある電話番号は除外するなど、録音するかどうかを設定で選べる工夫はサービス化していきたい」とNTTグループは説明する。
高齢者・シニアの見守りという課題
これまで特殊詐欺は、通話の内容が怪しいと感じた本人や親族などが通報ないし相談するという方法でしか対策が行えなかった。しかし特殊詐欺解析AIを利用した対策であれば、本人が通話内容に違和感を抱かなかった場合でも、迅速に注意喚起を受けることが可能だ。
核家族化が進み、高齢者とその親族が別居している家庭の数も増えた。高額の振込を求められるような深刻な問題を相談する相手が身近にいない高齢者も多い。本サービスは、そのような現代の家族の在り方に寄り添い、遠方でも見守ることができる手段の1つとして機能するものではないだろうか。