ひずむ郵政(4)売れない「みまもり」にもノルマ 家族対象に自腹営業 

2019年07月29日西日本新聞

  
昨年11月、愛知県の男性局員は発売されたばかりの年賀はがき約1万枚を自腹で購入し、近くの金券ショップに向かった。店内には6、7人の先客。サングラスやマスクを着け、自分と同じ年賀はがき入りの箱を持参していた。「どこもノルマが大変なんだな」。男性は深いため息をついた。

販売ノルマをこなせず、年賀はがきや暑中・残暑見舞い用はがき「かもめ~る」を自腹購入する局員は後を絶たない。日本郵便は昨夏以降、ノルマにあたる「販売指標」を廃止する方針を出したが、一部の局では依然として過剰な枚数を販売するよう求められる。

 福岡県のある局では、個人の販売ノルマはなくなったが、十数人の班ごとにかもめ~る約4千枚が割り振られた。うち千枚を売ることになった男性局員は「班で連帯責任を負わされ、個人のノルマよりきつい」とぼやいた。

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 日本郵便が2017年に始めた「みまもりサービス」。月額2500円。局員が1人暮らしの高齢者宅などを訪問し、家族に近況を伝える報告書をメールで送る仕組みだ。全国約2万4千局ある郵便局のネットワークを生かした商品として当初は期待されていた。

 契約数は約2万3千件といわれるが、多くの局員は「地域ボランティアが同じようなサービスを実施しており、全く売れない。ほとんどが自分の家族を見守り対象にした自腹営業だ」と口をそろえる。

 「毎月、大事な時間を使わせてしまって…」。孫の局長が契約する北海道の高齢夫婦は、訪問した局員に申し訳なさそうに話した。局員の負担を減らそうと、自ら局を訪れ「元気です」と伝える親族までいる。


 中には、見守り対象の母親が亡くなったにもかかわらず契約を続ける局長も。解約すれば、新たな契約ノルマが発生するからだ。

 「とくになしwww」「あああああ」「121212」。内部文書には、局員自身が家族を見守り、自分宛てに出したとみられる不適切な報告書が挙げられ「コメント欄に、ローマ字表記等、内容が不明瞭な記載が確認されています!」と注意を呼び掛ける。

 毎年のノルマは局あたり1件。現場からは「意味がない」「やめるべきだ」と反発する声が相次ぐが、同社の横山邦男社長は昨秋の本社会議でこう述べたという。「1局1件は負担ですか? ノルマですか?」「やるべきことを果たしていただきたい」

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 郵便局に置かれたカタログやチラシで品物を注文し、ゆうパックで配送する物販サービスにも、ノルマが課される。

 海産物、果物、化粧品、ランドセル、布団…。取り扱う商品は多岐にわたる。目標販売数に達しなければ、暗黙の了解で局員が自腹購入。岡山県の女性局員は「年間50万円分は買っている」と打ち明ける。

 局長の1人は嘆く。「会社は需要に見合わない目標を設定し、局員は不平を言いながらもそれをこなそうとする。役所体質が残ったままだ」

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■年賀はがき19億枚減

 年賀はがきの発行枚数は2004年の約44億5900万枚をピークに年々減少し、19年は約25億5900万枚にとどまる。かもめ~るも00年は約3億1100万枚だったが、近年は2億枚台で推移。19年の当初発行枚数は約2億500万枚だった。

 電子メールやインターネットの会員制交流サイト(SNS)の普及により、若者を中心にはがきを出す習慣が薄れていることが要因に挙げられる。

 このため、日本郵便はお年玉付き年賀はがきの賞金を増やしたり、無料通信アプリLINE(ライン)から年賀はがきを発注できるサービスを導入したりするなど販売のてこ入れを図る。