クラボウが強化する「コト売り」戦略の中身 製品で体験・経験を提供 

2019年07月21日ニュースウォッチ

  
 クラボウは祖業である繊維事業の成長戦略として糸や生地などの素材単体売り中心の事業から脱却し、培った素材技術を用いた製品で体験や経験を提供する「コト売り」の取り組みを強化する。4月に技術の用途開拓や顧客のニーズ解析を行って、新事業モデルを構築する組織「事業推進部」を立ち上げた。まずは同社が開発したシャツ型スマート衣料を使った熱中症対策支援システムの普及、応用展開を進める。顧客目線に立った高付加価値製品・サービスの提供で、事業の活性化を図る狙いだ。

生体センサー

 クラボウは2018年5月、建設業や運送業向けに、熱中症など暑熱環境下での作業リスク低減を支援するシステム「スマートフィットフォーワーク」のサービスを始めた。同社の導電性繊維を使ったシャツに生体センサーを装着し、着用者の心拍や、加速度などの生体情報を高精度に測る。大阪大学や日本気象協会と開発した、着用者の生体データを個別解析する独自のアルゴリズムで、作業者の熱中症や転倒の可能性などを、管理者が遠隔で把握できる。数百人規模のデータを一括管理でき、わかりやすい管理画面が特徴だ。

 同システムのサービス利用料は、1ユーザー当たり初期設定費用が3万円(消費税抜き)で、月額6000円(同)。別途、スマートシャツを1枚4000円(同)で購入する。18年度は大手建設会社の作業現場のほか、製造、警備、施設管理、産業廃棄物処理業者など20社に採用された。ユーザーからは「(環境省が発表する)暑さ指数や作業員の自己申告では計れない体の負担が“見える化”されていてリスク回避に効果的」と好評だ。

データを蓄積

 クラボウの繊維事業部事業推進部の藤尾宜範副部長は「プログラムを売って終わりではなく、クラウド上にプログラムを置いてデータを蓄積する。顧客の声を聞きシステムの更新を繰り返していく」と、顧客目線で機能を改善するサービス提供にこだわる。19年度からの新規サービスとして、作業者の体の回復レベルが把握できるグラフや、始業前に3分程度の計測で、朝一の体調を把握できるチェック機能などを追加した。

利用領域広げる

 システムの利用領域も広げる。大学と連携し、小・中学生といった発育期の部活動中の熱中症リスク低減向けの新たなシステム開発を推進。さらに高齢者の見守りでの活用も視野に入れる。これまでスマートシャツはポリエステルなど合成繊維を材料に使っていたが、高齢者にも比較的なじみのある綿素材を使ったシャツや、女性作業者が着用するスポーツブラタイプも拡充した。

 国内の人口減少やアパレル市場の不振などの影響で、繊維販売は頭打ちにある。繊維の類似品が出回るのも早く、迅速な高付加価値製品・サービスの開発が求められている。藤尾副部長は「モノ売りではなく、顧客に利益を与えられるサービスで価値を認めてもらい対価をもらう」戦略で事業成長を狙う。