企業が続々参入 高齢者見守りサービスが“群雄割拠”の理由

2019年06月19日日刊ゲンダイ

 
 いわゆる「高齢者見守りサービス」とは、離れて暮らす親の安否を知るための企業サービスだ。

 5月に発表された総務省統計局のデータによれば、高齢者とされる65歳以上の人口は3577万人。そのうち75歳以上は1835万人。人口減少の中、65歳以上の人口および65歳以上の一人暮らしは急増中だ。1980年には88万人だったが、2020年には667万人に。35年には762万人に達すると内閣府は推計している。

 このような背景で企業は次々と見守りサービス市場に参入している。ベンチャーもいるが、大手企業はこれまで築き上げた技術やサービスを応用したものが多い。

 サービスは内容で大別すると、センサー型、訪問型、会話型、3者を組み合わせた複合型の4つに分類できる。

 まずセンサー型は、室内に設置されたセンサーが室内にいる人間の行動を把握。センサーには温度、湿度、照度、人感、赤外線、音響などのタイプがあり、単独もしくは複合的に使われ、センサーがベッドやドア、トイレなどに設置される。すると外出の有無やトイレに入った回数、起床時間などを把握できる。感知された活動情報は家族のスマホなどにメールやSNSなどで伝えられる。

 会話型見守りサービスを展開してきた株式会社こころみ代表取締役の神山晃男氏は、まだ見守りサービスに対する消費者の期待値が定まっておらず、業界自体に勝ちパターンが見つかっていないという。同社は、見守りサービスで培ったノウハウで自分史作成サービスを展開するなどしており、今後はBtoB領域でベテラン社員のコツやノウハウを聞き取りしていく方向だ(見守りサービスは現在新規受け付け停止中)。

■センサーが嫌で膀胱炎になった例も

 神山氏によると「高度のセンサーだと活動量が分かり、データを見れば元気かどうか分かる」とセンサー型の利点を指摘。しかし、「センサー型は親が嫌がることが多い。カメラなんて絶対無理です。倒れるとしたらトイレが多いので、トイレにセンサーを設置することは有効ですが、監視されるから嫌だとトイレに行かず、膀胱炎になった女性もいます。身に着けるタイプのセンサーもあるが、わずらわしさや、毎日充電する不便さがある」(神山氏)。

 家にセンサーという異物が入る難しさがある中、売れ行きを順調に伸ばしているというのが、1部上場企業のソルクシーズの「いまイルモ」だ。

「一般家庭はもちろん、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームが差別化するために導入するケースが増えている」という。カメラに見えないようにするなど2度のデザイン改定をした。「大切な見守り」とは、些細な変化に気づくための日々の見守りだという。

 アイポッドならぬ象印の「i―PoT」は01年のサービス開始以来、延べ約1万2300件の契約があるそうだ。

「80歳、90歳の方を中心に使われています。センサーは見張られている感じがあるが、ポットはさりげなく、とっつきやすいため、受け入れられているのでは」(象印マホービンみまもりほっとライン担当)

■さりげなさと負担感のなさがポイント

 日常の飲む行為で見守るといえばネスレ日本の「ネスカフェ コネクト」は17年9月にスタート。ネスカフェのコーヒーマシンとタブレットを貸し出す。コーヒーを入れると子供のLINEにスタンプが送られて、安否が確認できるというもの。しかし今年3月でサービスは終了。「すべて解約し、タブレットも回収している」という。

 ただし、見守りサービス市場から撤退するのではなく、「秋にはリニューアルした新サービスを提供する方向」(ネスレ日本)だそうだ。

 センサーはガスや電気の使用状況から生活を確認するサービスのように、いろいろな意味でさりげなく負担感がないモノが親に受け入れられるポイントらしい。