単身高齢者、ICTで見守り 睡眠・呼吸・脈拍……

2019年04月19日朝日新聞

 
 情報通信技術(ICT)を活用したまちづくりを進めるため、神戸市NTTドコモと連携協定を結んだ。ドコモの持つ最先端技術を生かし、単身高齢者の見守りといった社会課題の解決や、市民サービスの向上を目指す。
 市とドコモは3年前、ICTの活用に関する協定を結んだ。市立小学校5校の生徒計約800人に直径3センチほどの「電子タグ」を配り、学校や児童館、図書館などに設けた検知器で、居場所を保護者が確認できるサービスの実証実験を進めてきた。

 今回新たに結んだ協定では、①単身高齢者の見守り②登山遭難者の捜索効率化の実証実験を始める。

 ①では、単身高齢者の異変を、離れて暮らす家族らが察知できるサービスの実用化を目指す。2015年の国勢調査によると、神戸市の高齢化率は27・1%。高齢者の4分の1にあたる約10万世帯が単身で暮らしているとされる。

 実証実験では、高齢者が生活する部屋のコンセントに小型装置を設置。センサーが電波を発し、その反射状況によって取得したデータを専用のAI(人工知能)が解析する。

 家族らは、高齢者の歩行や睡眠、呼吸、脈拍といった状態をスマートフォンなどで確認し、異変があった場合に速やかに対応できる。カメラを使わないため、プライバシーに配慮できる点が特徴という。

 ②では、六甲山の登山口にワイヤレスカメラを設置。人感センサーを備えており、登山者が前を通った際に写真を撮影し、クラウドに送信する。遭難者を捜索する際に、どの登山口から登ったかを特定することで、捜索範囲を狭められることが期待されている。

 六甲山は都市部に近く、気軽に登山を楽しめる一方、遭難者が多発。一昨年の市消防局の出動件数は71件で、ヘリは40回出動した。山間部では全地球測位システム(GPS)を使った遭難者の特定が難しい場合が多く、捜索に時間がかかっていた。ワイヤレスカメラは単3電池2本で数年もち、1台1万円程度のため、防災など他分野での活用も視野に入れている。

 神戸市役所で3月に協定を交わしたNTTドコモの吉沢和弘社長は「神戸市と一緒になって社会的な課題解決をしていきたい」。久元喜造(きぞう)市長は「ICTを使った行政サービスとして期待される分野には無限の可能性がある」と話した。