高齢者見守りで「脱下請け」 中小企業、技術活用で狙う 介護人材の不足解消効果も期待

2019年03月25日SankeiBiz

  
 下請け体質からの脱却と独自商品の創出に挑む中小企業が増える中、ソフトウエアの評価・開発を手がけるエリントシステム(川崎市中原区)は、高齢者の増加で成長が見込める介護・医療分野で自社ブランド商品を投入する。労働力不足に悩まされる介護などの現場の負荷軽減に向け、5月から非接触型見守りセンサーを売り出す。一足早く参入したアルコ・イーエックス(茨城県ひたちなか市)は「リアルタイムで映像を見て確認できる」機能が評価され、今年に入ってから問い合わせが急増している。

 ブレークの予兆

 エリントが開発した見守りセンサー「e伝之介くん」は、ベッドから離れたことを知らせるセンサーマットを「しのぐ」をコンセプトに、「起床・離床」と「検知・通知」機能に特化。カメラから取り込んだ画像でベッド上の被介護者・患者の動きを監視し、起きたときは「コケコッコ」、離れたときは「ワンワン」と泣いてナースコールしたり、離れているところへは音や光で知らせたりする。

 ベッドの頭上の壁などに設置するため、誰が踏んでも反応したり、簡単に取り外せたりするセンサーマットと違い、利用者以外の第三者を認識しないし、取り外される恐れもない。見守られていることを意識させないメリットを強調、センサーマットからの代替を狙う。

 手応えは既に感じている。神奈川県三浦市と川崎市のグループホームなどで実証実験を実施。高度なセンシング技術により認識率は90%超を実現。自宅で98歳の母親を介護する女性は「母は夜間に私を呼ぶことを気兼ねし、私はいつ呼ばれるか分からず眠れなかった。見守りセンサーが通知してくれるので互いに気が楽になった」と話す。

 松本正己社長は「高機能・高付加価値商品はあるが、現場で欲しいのは起きた、離れたという情報だ」と指摘する。シンプル・コンパクト・低価格(12万9000円)を武器に、初年度は300台の販売を見込む。

 「今年に入ってデモ機の貸し出しや見積もりの依頼が急増している」

 鉄道制御システムのソフトウエア開発を得意とするアルコの木田(こた)文二社長は2016年4月に発売した病床見守りシステム「ペイシェントウォッチャー(PW)」のブレークを予感する。

 赤外線カメラで部屋の明暗に関係なく撮影。数秒間隔で現在の画像を画面に表示するため、見るだけで部屋の状況を把握できる。他の先行メーカーは「映像はプライバシーの侵害や身体的拘束にあたる」との当局の指導を受け避けてきたが、介護現場から「見えない不安が軽減できる。安全も高められる」と評判を呼ぶようになった。

 「特別養護老人ホーム もみじ館」(茨城県水戸市)ではPW導入により巡回回数が平均15回から5回に減り、40分に1回の定期巡回も90分に1回になった。介護職員へのアンケートでは「見えないところで起こっているかもしれない不安から解放され、精神的ストレスが軽減された」との回答が多かった。

 ほとんどがセンサーなどハードウエアでの対応の同業他社に対し、IoT(モノのインターネット)などを活用したソフトウエアによる表現方法(人への伝え方)に一日の長があるという。お知らせのアイコン化、静止画から動画への移行、睡眠時の活動量のグラフ化など毎月のように新機能を追加。4月25日には非接触型バイタルセンサーを搭載予定で、脈拍や呼吸などのデータを収集し継続的に監視することで異常を知らせることができる。

 初の自社ブランド商品を手に入れた両社には共通の課題があった。エリントはキヤノン、アルコは日立製作所への売り上げ依存度が高く、受託会社ゆえに自社商品を創り出すことも苦手だった。松本氏は「(ハードウエアの)生産も販売も知らず、ゼロからのスタートだった」と振り返る。

 開放特許活用も

 そこでエリントは富士通と患者見守り技術に係る特許の実施許諾契約を結び、商品化にあたり元社員が創業したソフト開発会社を統合。アドバイザーも招き入れた。アルコも富士通の開放特許を活用し、ともに見守りセンサーで介護の現場などにアピールする。

 木田氏は「世界が高齢化に突き進んでおり、その問題解決に応える商品の需要はますます拡大する」と確信する。現状では全国で約80台が導入されているにすぎないが、今年は一気に500台の販売を狙う。

 松本氏も「介護現場は人手不足で大変。IT企業として培った技術を介護に生かし、楽にしてあげたい」という。その熱い思いがかなうまでそう遠くないだろう。