増える高齢者への賃貸入居拒否 「孤独死、滞納に懸念」

2019年03月16日京都新聞

 
 孤独死や家賃の滞納などへの懸念から、高齢者が賃貸住宅の入居を拒まれる例が増え、全国的な課題となっている。京都市内でも65歳以上の単身高齢者は約8万6千人(2015年調査)と20年前の2倍以上に増加しており、持ち家の無い人が「終(つい)のすみか」の確保に悩む場合も多い。市や不動産業者は、高齢者を拒否しない物件の紹介や見守りサービスを展開しており、活用を呼び掛けている。

 京都市住宅供給公社が運営する京(みやこ)安心すまいセンター(中京区)で、1月下旬に開かれた「高齢期の住まいの相談会」。賃貸物件への転居を希望する高齢者が次々に訪れ、不動産の専門家に悩みを相談していた。上京区で一人暮らしの女性(70)は「年金も少なくなり、今の家賃を払い続けるのは厳しい。元気な間に最後の住まいを決めないと」とこぼす。

 ただ高齢者が物件を探す場合、年齢や保証人の不在、年金暮らしなどを理由に拒まれる例が多いのが現状だ。市内のある不動産業者は「最近でこそ家主の意識も変わりつつあるが、年齢で区切って断るケースは今も少なくない」と打ち明ける。

 こういった高齢者らを支援するのが、市や不動産、福祉団体が12年に設立した「市居住支援協議会」。年齢で入居を拒まない物件の登録制度を設け、専用サイト「すこやか住宅ネット」で市内の約5千戸(入居中含む)を公開。京安心すまいセンターに相談窓口を開設し、不動産業者への橋渡し役も担う。

 年齢の問題以外にも、低所得だったり、身寄りや保証人がいないといった課題を抱える人も。そこで同協議会が14年から始めたのが、住居の確保と見守りサービスを組み合わせた「高齢者すまい・生活支援事業」。

 同事業では、近隣の福祉施設職員が65歳以上の高齢者の物件探しを手伝った上、入居後は週1回の見守りも行う。孤独死や家賃滞納といった家主の不安を取り除き、入居につなげる狙いがある。全国でも先進的な取り組みだ。

 市住宅政策課によると、制度開始から現在までに約1200件の相談があり、約80件の入居が実現したという。ただ、職員を派遣する余力のある福祉施設は少なく、サービスを展開しているのは市内7区にとどまる。同課は「市全域に広げると共に、支援体制があることを周知するのが今後の課題」と話す。

 国土交通省によると、15~25年の10年間に高齢の単身世帯は全国で約100万世帯増加する見込み。公営住宅戸数の増加が見込めない中、民間賃貸への入居ニーズは高まるとみられ、市でも一層の支援が求められる。

 京都市内で転居を希望する高齢者の支援に関する相談は、京安心すまいセンター075(744)1670へ。