沿線住民の健康「見守り」…近鉄が腕時計型端末使い、鉄道事業者初の試み

2019年02月05日読売新聞

 
 近鉄グループホールディングス(大阪市)は4月から、奈良市の沿線住民300人を対象に、腕時計型のウェアラブル端末を使って健康状態を管理する実証実験に乗り出す。1年間、睡眠時間や燃焼カロリーなどのデータをインターネット上で管理し、食事メニューなどをアドバイス。鉄道事業者として初の試みで、高齢化が進む沿線の活性化につなげる。

 近鉄学園前駅を利用する30歳以上が対象。駅周辺の住宅地は1950~80年代に近鉄が開発したが、住民の高齢化が進み、健康不安などの問題が懸念されている。

 実験では、奈良県立医大(橿原市)の卒業生らが出資するベンチャー企業「MBTリンク」が開発したデータ収集システムを使う。入浴時を除き、手首に巻いたウェアラブル端末で歩数や睡眠時間のデータを毎日計測する。自宅には小型センサーを置き、気温や湿度、騒音などと健康の関係も調べる。

 データはネット上で管理し、住民の健康状態を総合的に判断して体調の変化や、お薦めのメニューをスマートフォンなどに通知。一人暮らしの高齢者の異変を察知すれば、直ちに家族に知らせて孤独死のリスクも防ぐ。

 また地域活性化につなげるため、継続して参加した住民には最高1万円分のネット上のデジタル通貨を発行。近鉄グループが運営するスーパーやバスツアーが利用できるという。

 2020年度の事業化を目指しており、同社の担当者は「将来的には県内の沿線全域に拡大し、オンライン診療の普及やインターネットを通じた服薬指導も行いたい」としている。