みんなで高齢者見守り スマホに不明情報 郡山SOS連絡会

2019年01月23日福島民報

 
 郡山市は四月にも、徘徊(はいかい)などで行方不明になった認知症高齢者の情報を市民のスマートフォンに直接発信し、早期発見につなげる取り組みを始める。市が事務局の「市認知症高齢者SOS見守りネットワーク連絡会」に加入する約百十企業・団体の従業員や職員ら千人程度に外見などの特徴を知らせ、保護してもらう。少子高齢化が進む中、情報通信技術(ICT)を活用して市内全域を網羅する見守りの目をつくる。

 警察から行方不明者の情報提供を受けた連絡会は、無料通信アプリのLINE(ライン)を使って行方不明者の氏名、年齢、性別、外見の特徴、最後に見た場所、顔写真などの情報を、会員事業所と会員個人に直接伝える。情報を得た会員は高齢者発見後、速やかに連絡会に報告、または声掛けするなどし、保護につなげる。

 現在、高齢者の情報が発見後に自動的に削除されるよう、ラインに組み込むアプリを作成している。市は三月までに、職員を対象に実証試験を実施する方針。

 連絡会は二〇一五(平成二十七)年十一月に発足。福祉事業所や新聞販売店、自治会、バス・タクシー会社、コンビニ、スーパー、金融機関、報道機関、警察組織などが加入している。外回りの従業員も多く、高齢者が行方不明になる事案が発生した場合、会員企業・団体にメールやファクスで知らせ、情報を募っている。

 ただ、この方法だと各従業員にまで情報が行き届かない。発足以降、連絡会には警察から三十二件の行方不明の連絡があったが、会員から寄せられた情報は一件だけにとどまった。このため、従業員ら個人に直接情報を提供することにした。

 遠藤広文市保健福祉部長は「今後は会員事業所を増やし、網の目をより細かくしていきたい。会員以外の市民に協力を求めることも検討していきたい」と話している。

 認知症高齢者の徘徊は全国的な問題となっている。警察庁のデータによると、行方不明届が出された全国の認知症、または疑いがある人の数は二〇一二年が九千六百七人、二〇一七年が一万五千八百六十三人と年々増加している。県内では、二〇一七年の一年間で、県警に百五十四人の届け出があった。東京電力福島第一原発事故の避難者が、避難先の地理に乏しく行方不明につながることもあるという。

■過去にはGPS、QRコード

 郡山市や県内自治体はこれまでにも、行方不明の高齢者がすぐに探し出せるよう衛星利用測位システム(GPS)の機器を貸し出したり、個人情報が入力されたQRコードを衣服に貼ってもらうなどの対策を講じてきた。しかし、GPSは高齢者が持ち歩かないことが多い。QRコードは仕組みそのものが一般市民に十分に知られておらず、発見につながりにくいという。

 県によると、県内の六十五歳以上の人は昨年十二月で五十六万八千八百二十人おり、認知症または認知症の疑いがある人は28%ほどに上るという。