リストバンド型端末で高齢者見守り、異変に即対応

2019年01月11日産経新聞

 
 リストバンド型の端末を使い、高齢者の見守りや健康維持に役立てる取り組みが広がっている。昨年12月、京都市内のサービス付き高齢者向け住宅では、こうした端末を使った24時間の脈拍モニタリングを始めた。脈拍の異常時にはアラート機能が働き、早期に対応することで本人や家族の安心につながることが期待されている。

 ■脈拍で急変検知

 「最近腕時計をしていないから、代わりになるね」。京都市下京区のサービス付き高齢者向け住宅「メディカルグランメゾン京都五条御前」に住む80代の男性は、手首に付けた黒のリストバンド型端末をうれしそうに触り、ほほえんだ。

 室内には専用のデータ通信装置が設置されており、端末が測定した脈拍をリアルタイムで送信。施設側が専用アプリで脈拍の波形を確認できるほか、上限や下限の数値を一定時間超えた場合、自動で職員にアラート(警報)が発信される。使用者自身が異変を感じて緊急ボタンを長押しすることで、職員に急変を知らせることもできる。

 施設を運営する「ジェイ・エス・ビー」によると、同施設は看護師が24時間常駐していることもあり、看取りを視野に入れた高齢の入居者も少なくない。高齢者事業本部運営企画部長の井上隆司さん(40)は「脈拍異常を検知することで、いつの間にか亡くなるという事態を防げるのではないか。患者さんと家族の安心、職員の負担軽減にもつながれば」と期待する。

 昨年12月から試験的に80~90代の入居者5人が使用。効果が確認できれば、同社が運営する他の高齢者施設でも導入していく予定だ。

 システムは岐阜県の松波総合病院が発案。平成28年からは岐阜市の医療関連サービス会社「トーカイ」も加わって、昨年10月に実用化した。医療機器としての認証を取得し、測定の精度は高い。トーカイの大塚幸平さん(28)は「すでに100人程度のデータを集め、異変が起きた場合の波形を蓄積しつつある」という。

■警備会社に通報

 リストバンド型の端末を見守りに生かすサービスは他にもある。セキュリティー会社「セコム」は29年7月から、ホームセキュリティーのオプションサービスとして「セコム・マイドクターウォッチ」を開始。利用者自身がセコムに救急通報できるほか、突然意識を失って転倒した際の衝撃を検知したり、逆に一定時間体の動きを検知しなかった場合、セコムに自動的に通報される機能もある。広報担当者は「常時装着することで、屋内外を問わずお客さまの安全や健康を見守ることができる」と話す。

 一方、リストバンド型端末を使い、介護予防のための機能訓練を効率的に行う取り組みも始まっている。29年8月にスタートした「モフトレ」は、利用者が専用の端末「モフバンド」を腕や足につけ、プログラムに沿った機能訓練などを行うと、どの程度できたかなどの結果を自動で記録。サービスを提供する「モフ」(東京)によると、高齢者を対象とする数百施設で導入され、高齢者向けのデイサービスなどで数千人が利用している。可動域やバランス、実施回数などを正確に把握できるため、成果が見えやすく、本人のやる気にもつながっているという。