探偵事務所も参入し始めた「高齢者見守りサービス」の実態

2019年11月28日日刊ゲンダイ

 

 急速な高齢化で、わが国の65歳以上の人口は3558万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は28・1%となった(18年10月1日現在)。

 高齢化社会が進む中、高齢者の運転による重大な交通事故が多発するなど、不安を抱える家族は少なくない。こうした家族に代わり、高齢者を見守る「高齢者見守りサービス」を開始した企業が増えている。中でも注目されているのが、探偵事務所による見守りサービスだ。

 探偵事務所と言えば浮気調査、素行調査が浮かぶが、全国に18拠点を持つ原一探偵事務所(本社埼玉県川越市)は、調査に用いる中核技術を高齢者ケアに応用した見守りサービスを展開する。同事務所が両親と別居している男女618人に行った調査では、両親の暮らしぶりをきちんと把握している人は4分の1。両親との別居に不安を感じている人は約57%にも上ることが分かった。

 同事務所の高齢者見守りサービスは、調査対象者を尾行・隠し撮りして行動を記録、行動記録をDVDで依頼者に渡す。

「GPSでの行動記録や、緊急時の駆け付けサービスでは危険を未然に防ぐことは不可能です。うちは、高齢者・認知症ケアの専門家に指導を受けたプロの調査員が見守ることで、高齢者が起こす問題を未然に防ぐことができます」(同社広報企画部・平木麻美さん)

 行動記録のDVDは、車の免許返納の説得にも役立っているという。

「親の運転が不安になり免許の返納を勧めても『自分は大丈夫』、中には『バカにするな』と怒る男性が少なくありませんが、蛇行運転やブレーキが遅いなどの様子を記録したDVDを見せるとショックを受け、説得に応じるというケースも見られます」(前出の平木さん)

 料金は時間やコースによるが、徒歩圏内でのいつもの行動範囲の見守りは3時間で3万円から。運転や趣味の見守り安心コースは5時間で5万円からだ。もちろん行動記録の動画と報告書が付く。

■セコムや郵便局なども続々参入

 探偵事務所による高齢者の見守りサービスは全国で初めてのケースだが、大手企業も続々参入している。セコムは自宅にセンサーを設置し、一定時間動きがないとセコムに送信する「安否見守りサービス」。象印マホービンは、無線通信機を内蔵したポットを使い使用状況で異常をチェックする「みまもりほっとライン」。郵便局は「みまもり訪問サービス」「みまもりでんわサービス」「駆けつけサービス」の3種類を提供するなど、各社多様なサービスが生まれている。訪問看護ステーション「ぽけっと」の上田浩美代表が言う。

「認知症でなくても、毎朝家を出て夕方帰り、家族が行く先を聞いても分からないという高齢者は少なくありません。車の運転も同じで、行動記録をDVDで見せられ、初めて家族の言うことを聞くようになる高齢者は多いはずです。高齢化社会の中で見守りサービスは、本当に必要なサービスです」

 ただ、介護保険適用外のサービスであることを忘れてはいけない。