タブレット・センサーで高齢者見守りや移動支援 / 愛知

2016年1月25日読売新聞

 高齢者の見守り支援や移動手段を確保するため、タブレット端末や人感センサーを使った実証実験が、中山間地の豊田市足助(あすけ)地区で始まった。同市と名古屋大、東京大、地元の足助病院が連携した取り組みで、高齢化社会に向けた新たなモデルを目指す。(黒岩宏行)

 実証実験は足助地区の2か所(人口約190人)で、高齢者と住民19人が参加して20日からスタートした。

 タブレット端末は、参加者への情報提供に利用。スケジュール表と組み合わせて、公共施設での文化教室や病院の健康教室、商店の買い物情報などを紹介する。

 また、マイカーに高齢者を同乗させて目的地まで送迎する「あすけあいカー」を新たに始め、高齢者が出かけたいときの交通手段として、地域の人たち10人が協力する。どうすれば効率よく移動できるか、タブレット端末で、小型電気自動車やタクシー、地域バスを組み合わせた最適な移動方法を名大の事務局が案内する。

 さらに、人感センサーを一人暮らしの高齢者宅に設置し、家の中での生活の見守りに役立てる。日常の生活パターンが把握でき、茶の間から長時間動かないままになっているなど不自然な状態をセンサーが感知したときには、近くの人や遠隔地の家族に知らせる。

 参加した高齢者9人の中には、タブレット端末の操作に不慣れな人も多く、担当者による操作のアドバイスや事務局での電話応対も続けることにしている。

 実証実験を機にタブレット端末を使い始めた宇井桂子さん(85)は「練習して少しずつ使えるようになってきた。楽しみながら覚えていきたい」と話した。実験を担当する名大の剣持千歩研究員(45)は「移動支援と健康管理のデータを集めて、地域の人たちが長く利用できる仕組みを作っていきたい」と話していた。

 実証実験は3月末まで行われた後、新年度から3年間かけて高齢者が自立できる新たなシステムの開発に取り組む。足助地区は住民約8000人のうち、65歳以上の高齢者は約3000人と4割近くを占めている。今後、足助周辺の中山間地で参加者や地域の拡大を進めることにしている。