不審電話対策に録音装置 県が高齢者宅など無料貸与へ

2016年1月24日読売新聞

 特殊詐欺被害につながる不審電話を撃退しようと、県は固定電話に取り付ける通話録音装置の無料貸し出しを、今月中にも始める。装置は、電話してきた相手に警告音で会話を録音することを告げる仕組みで、撃退効果が期待される。周囲に頼る人がいない一人暮らしの高齢者宅などを対象に、1000台を貸し出す予定だ。(植田優美)

 通話録音装置による不審電話対策は、県内では初めての取り組み。県は今年度の9月補正予算に事業費1000万円を計上。国の地方消費者行政推進交付金を充てる。

 装置(縦15センチ、横10センチ)は付属コードで固定電話機につないで設置。電話がかかると、自動的に「振り込め詐欺などの犯罪被害防止のため、会話が自動録音されます」と警告音が流れ、実際に話すと会話が録音される。

 県警によると、電話してくる詐欺犯は証拠が残ることを恐れるため、録音を警告すると自ら電話を切る傾向が強いという。会話をすれば、装置が高音質で録音し、被害に遭った場合の犯人特定の証拠になる。

 装置を接続する固定電話に電話番号を表示するディスプレー機能がついていれば、非通知電話を着信拒否することができるほか、特定の番号の電話には警告音を流さない設定もできる。

 さらに、家族や親類の電話番号を緊急連絡先(4件まで)として登録しておくと、録音装置のボタンを押すだけで、病気や災害時に、異変を知らせることもできる。

 通話録音装置の貸し出しは、2013年度に消費者庁が岩手、千葉、大分の3県でモデル事業を実施。計238世帯に設置したところ、悪質な電話が大幅に減り、利用後のアンケートで、利用者の約96%が「安心感につながった」と答えたという。

 今回の県の貸し出しは、1000台に限られるため、各市町や警察署など地域で高齢者の見守り活動をする各機関で協議して貸し出し対象を決める。過去に特殊詐欺被害に遭った人や、一人暮らしで周囲に頼れる人がいない高齢者らの住宅を想定しており、同意を得て設置する。

 県くらしの安全安心課は「電話でお金の話が出たら詐欺を疑うよう呼びかけているが、いざ話すと、相手の話術に乗せられて被害に遭う人が後を絶たない。電話に出る前に不審電話を撃退できるこの装置が日頃の安心につながれば」と期待。「効果があれば、追加の貸し出しを検討したい」としている。