日中独居高齢者がどんどん増える

2016年1月01日けあZine

 先日、テレビ番組で“日中独居高齢者”についての番組を放送していました。独身の子どもに介護されている高齢の親は、子どもが仕事に行っている間、日中でも夜間でも一人きりになってしまう。すると体調が急変しても、対応が遅れて最悪の事態を招くことがあるとのこと……。昔のように働き手と介護者が別という時代は過ぎ、これから益々“日中独居”の高齢者が増加する傾向にあります。この問題に、地域や近隣住民はどうかかわっていけば良いのでしょうか。

日中独居高齢者を取り巻く実態

 近年、日本では社会全体の環境が大きく変化してきました。核家族化は言うまでもなく、“結婚しない”“子どもを持たない”などのように家族に関することから、正社員・非正規社員といった働き方の多様化など……。そのような社会環境の変化が、「介護」にも直結している例が“日中独居高齢者”です。少し、例を挙げながらその実態を見てみましょう。

介護者=主な働き手という現状

 30代独身の息子による介護を受けながら生活している、70代後半の男性。息子は非正規社員として働き、昼と夜の仕事を掛け持ちしています。支給される年金と合わせて何とか暮らしていける状態のため、訪問介護の回数を増やすことができません。

 そのため男性は、昼間の仕事を終えて夜の仕事に出かけるまでの短い時間しか息子と顔を合わせることができず、夕食は息子が買って来る簡単なお弁当という生活。ヘルパーが来る週数時間は心配ありませんが、それ以外はほとんど一人です。息子も、高齢で介護の必要な父親を一人にするのは心配。しかし、自分が働かなければ生活が立ち行かなくなる以上、どうしようもありません。

 父親の様子を確認してもらうにも近所との付き合いはなく、昼間のみならず夜も働いているため、役所や包括支援センターに相談に行く時間もない。生活を支えながら一人でギリギリの介護をしている息子に、支援の手を差し伸べられるのはどの機関なのでしょうか。

一人で両親の介護

 40代の独身女性。働きながら、70代の両親を一人で介護してきました。しかし女性が仕事に出て留守の間に、母親の病状が急変したのです。認知症の父親は救急車を呼んだり、隣近所の人に助けを求めたりることができません。女性が帰宅したときには母親は亡くなっていました。

 もちろん訪問看護は受けていましたし、病院に連れて行くこともありました。しかし、何の前触れもない急変だったので、対処しようがなかったのです。近所の方とも付き合いがあったので、女性が仕事で留守の時多少の見守りは頼んでいたといいます。しかし、それでもどうにもなりませんでした。

日中独居高齢者の増加

 家族の有り方がひと昔前とは大きく変わったうえ、少子高齢化が超ハイスピードで進行。さらに追い打ちをかけるように、昨今は正社員での終身雇用という働き方にも陰りが見えています。そのため、不安定な仕事で生活にギリギリの収入を得ながら、高齢の親をたった一人で介護しなければならない人が、さらに増えると予想されているのです。

 介護や生活について相談できる包括支援センター。そういった窓口が朝9時から夕方5時まででは、相談したくてもできないというケースが非常に多いでしょう。また、たとえ相談できたとしても、人手不足などで実際に支えてくれるシステムが十分に確立されていない地域もあるはずです。

 サービスを受ける高齢者自身は、当然ながらヘルパーと顔を合わせるでしょう。しかし、その家族は仕事に出ていて不在。介護に関する不安は内にこもってどんどん膨らんでいき、いつか限界をむかえることが危惧されます。

 要介護度が高くなければ、入所介護サービスが受けられません。これまで以上のサービスを必要としているのに、経済的な理由でそれを受けられない日中独居高齢者とその家族。ではいったい、どこに助けを求めればいいのでしょうか? 助けを求めるどころか、日頃の介護についての悩みやストレスを話す場所さえない介護者も多いのです。

 地域の包括支援センターに加え、NPOや民間のボランティア団体、町内会を含む近隣住民もさまざまな支援活動に乗り出しています。とはいえ、日中独居高齢者を抱える家族への支援も、また緊急の課題といえそうです。