『孤独死』を防げ 都内自治体本腰

2006年11月04日 東京新聞

 一人暮らしの高齢者らが自宅で亡くなり、気付かれない「孤独死」を防ごうと、対策に乗り出す自治体が増えてきた。東京都の6区8市1町の議会では、孤独死をめぐる問題が取り上げられた。江東区は1人で暮らす高齢者の生活実態調査に乗り出し、三鷹市や国立市などは地域ぐるみの見守り事業の拡充を計画。杉並、港、新宿の3区のように関係部署を横断する組織を設けて、縦割りの弊害をなくそうとする動きも広がりつつある。

 本年度に入って議会で孤独死についてやりとりがあったのは、新宿、江東、墨田、杉並、大田、港の6区と稲城、武蔵野、八王子、昭島、清瀬、東村山、西東京、三鷹の8市、大島町。

 杉並区の6月議会本会議では、高齢者問題に取り組む議員が質問に立ち「孤独死を社会全体の問題だと大きくしてみたり個人の問題だと小さく見て行政責任を回避したりするようなことがあってはならない。本気の施策と体制を」と迫った。

 区側は「高齢者の安全を守る事業が独立して行われ、対象となる人を総合的にとらえられていない。(医療、福祉、介護の窓口を一本化した)地域包括支援センターを中心に工夫をしたい」と答え、対策に乗り出すことを約束した。同区では、高齢者の効率的な安否確認を進めるため、来週中にも異変情報の集約と活用の在り方を話し合う「孤独死防止対策検討部会」(仮称)をつくる予定だ。

 江東区の6月議会本会議でも「団地やマンションが多い区内では、高齢者の孤立傾向が強い。一人暮らし高齢者への支援充実が求められる」と質問が出た。室橋昭区長は「11月に一人暮らしの高齢者らを調査し、実態把握に努めたい」と答弁した。新宿区と千代田区でも新たに高齢者の実態調査を進めている。

 目黒、三鷹、国立、狛江の1区3市などは、地域住民と協力した見守りネットワークの拡充を図ることにしている。

 港区は、保健福祉支援部を中心に関係部署による検討組織を設置する方針を固めた。縦割りの弊害を乗り越えようと、全庁横断的な「孤独死対策連絡会議」を9月に設立した新宿区や近く発足する杉並区に続く試みだ。

 厚生労働省は、地域ぐるみで孤独死防止対策に取り組む市区町村をモデルに選定し、事業費の一部を助成する方針。