世界初?舌鍛える「ベロゲー」 阪大発ベンチャー企業が開発、高齢者の口腔機能低下を防止
2026年03月06日産経新聞
飲み込んだり、話したりする口の機能が衰えて心身が弱まる「オーラルフレイル」予防を目指し、大阪大学歯学部発のベンチャー企業が、舌を動かすことでスマートフォンを操作するゲーム「ベロベロBAR」を開発した。世界的にも例がないという「ベロゲー」で咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)の際に必要となる舌の筋力「舌圧(ぜつあつ)」を鍛えて誤嚥防止など高齢者の健康寿命に役立てたいとしている。
要介護リスクが増加
開発したのは平成15年に設立された同大発のベンチャー企業で、歯科医療機器メーカーの「アイキャット」(大阪市淀川区)。「フレイル」とは加齢で筋力や心身の機能が低下し、健康と要介護の間の「虚弱」な状態を示す。同社によると口腔(こうくう)機能が衰える「オーラルフレイル」の人は要介護になるリスクが2・4倍という。食べたり、飲み込んだりする口腔機能は全身の健康と密接に関係しているが、低下しても薬や治療法はなく鍛え方や機能維持が注目されている。
口腔機能の検査では「パ」「タ」「カ」「ラ」の文字を「パパパパ…」「タタタタ…」と発話し、1秒間に6回未満なら「口腔機能低下症」が疑われる。高齢者施設などでは機能向上に向けて「パ」「タ」「カ」「ラ」と発話する「パタカラ体操」が実施されているが、単調で継続が難しいのが課題だった。
同社CEO(最高経営責任者)の西願(さいがん)雅也さん(47)と同大特任教授で同社CTO(最高技術責任者)の十河(そごう)基文さん(63)は「面白味(おもしろみ)のないものを面白く」とパタカラ体操をゲーム化するアイデアを思いつく。スマホに向かって「パパパパ…」と声を出すことで得点を競うゲーム「パタカラッシュ」を開発。しかし、発声や聴覚に障害のある人には使えないため、声を出さなくても遊べるゲームの開発に乗り出した。
スマホで楽しみながら
舌の画像認識などの工夫を重ねて開発したのが「ベロベロBAR」だ。スマホのインカメラで口元を撮影、舌を動かすことでスマホに触れることなく画面を操作できる。舌を左右にすると動きに応じて「ブロック崩し」のバーが動き、ボールをはじき返す。歌舞伎、福笑い、仮面舞踏会、サーカスのステージがあり、それぞれ口元の空いたお面が用意されている。
上達するとステージが進み、成果が見えるため継続しやすくなる。単調だった口腔機能トレーニングをエンターテインメント化することで楽しみながら鍛えることができるようになった。十河さんは「退職すると急に会話が減って口腔機能が衰えてしまう。運動やウオーキングをする高齢者は多いが、舌も筋肉なので鍛える必要がある」と話す。
一方、昨今は若年層の口腔機能低下も問題になっているという。無意識のうちに口が開いたままとなる「お口ポカン」の子供が増加しており、口腔内の乾燥などで虫歯や歯周病のリスクが高まったり、発音や食事への影響も懸念されたりしている。このため、西願さんは「高齢者が孫と一緒にオンラインで遊ぶこともでき、離れて暮らす親の安否確認など見守り機能にもつながる。またゲームでポイントを集めるポイ活の可能性もある」と今後の展開を見据えている。
いずれのゲームもスマホにアプリをダウンロードすれば無料で楽しめる。