高齢者の健康AIで見守ります「フレイル・軽度認知障害」見つける実験事業、電力会社とタッグ組む<ゼロ予算>…クマ緊急猟銃の「出動報酬」など新年度予算案
2026年02月17日読売新聞
兵庫県姫路市は16日、過去最大規模の総額2618億円の2026年度一般会計当初予算案を発表した。人件費や社会保障費が膨らんだことで、年度当初比で25年度を36億円上回った。17日開会の市議会に提案する。(古市豪)
記者会見を開いた清元秀泰市長は、予算案の規模が膨らんだ理由として、物価高騰や税収の増加などを挙げた。その上で「財政規律を順守し、まちづくりや人づくりにしっかりと投資をした」と説明。事業の取捨選択や予算の重点配分への配慮を強調した。
■歳入
市税は前年度当初比22億円増の1063億円を見込む。給与所得が伸びるとみて、個人市民税を約15億8000万円増の約339億1000万円とした。一方、法人市民税は関税や為替などが与える企業業績への影響を考慮して約1億1000万円増にとどめ、約74億8000万円とした。
市債は消防指令システムの更新や、小中学校体育館の空調設備整備など、大型事業への支出が終わったことで約86億9100万円減の約240億7500万円。
収支不足は約35億円で、市の貯金にあたる基金を取り崩して財源にする。26年度末の基金残高は約645億2000万円となる見込み。
■歳出
公共事業費など投資的経費は前年度当初比約33億7000万円減の約472億6800万円。
主な公共事業は▽体育館などを新設する手柄山平和公園の整備費(約145億7000万円)▽架橋工事を伴う広畑幹線道路などの街路整備費(約22億4000万円)▽私立保育所などの整備助成費(約19億1000万円)▽東消防署の建て替えなど消防施設の整備費(約13億円)▽旧ごみ処理施設「南部美化センター」の解体費用(約8億5000万円)――など。
義務的経費は約38億800万円増の約1344億6300万円。人件費は、改定による報酬給与費の増大で約15億9000万円増えて約422億4900万円。扶助費は、約14億500万円増の約705億5800万円。
扶助費は生活保護費が約9億7000万円増の約157億8000万円。障害者福祉費が約22億1000万円増の約193億7000万円などとなった。
■高齢者健康AI見守り
人工知能(AI)を生かし、高齢者の心身の衰え「フレイル」や、軽度認知障害の疑いを見つける実証実験を実施する。中部電力のシステムを活用。予算がかからない「ゼロ予算事業」として行う。
フレイルを見つける実験は、75歳以上で独居の高齢者が対象。自宅の消費電力のデータをAIが分析し、外出などの活動状況からフレイルかどうか判定する。結果は市に届き、保健師らが高齢者宅を訪問し、外出などを促す。
軽度認知障害を見つける実験の対象者は65歳以上。スマートフォンのアプリを使って月に1回程度、その日の日付など簡単な質問に答えてもらい、回答などをAIが分析する。疑いがあった場合、分析結果を見た市職員らが訪問し、医療機関の受診などを勧める。
参加者は各100人ずつを予定。実験結果を受け、市は2027年度からの本格導入を検討するという。
■クマ対策猟友会に支援
全国で相次ぐクマの被害を受け、市内猟友会の態勢強化を支援する。
会員の緊急対応に対する出動報酬として、緊急銃猟に5時間当たり3万3000円を支出する制度を新設するほか、追い払いは1回8800円(現在5500円)、交通事故などで動けなくなった動物の殺処分は同1万5400円(同1万1000円)に引き上げる。
市内での出没は、市街地では確認されていないが、郊外では昨年度と今年度で4件ずつあり、対応に当たる北部農林事務所は「緊急の際の対応訓練なども実施し、いざという時に備えたい」としている。
また、イノシシやシカなど有害動物の捕獲活動に新たに従事する人への助成制度も拡充する。狩猟免許取得費や、猟友会への登録費などへの助成額を、これまでの3万8000円から、ほぼ全額補助の9万7000円に引き上げる。
市によると市内の猟友会は3団体あり、会員約300人。近年の会員数は横ばいだが、70~80歳代の会員が3割以上を占め、後継者育成が課題となっている。
■5歳児健診モデル事業
モデル事業として5歳児健診を500人を対象に実施する。システム構築費など計約920万円を計上。2028年度からは、全ての5歳児を対象とした本格実施を見据えている。
乳幼児健診は、心身の発育状況などの確認を目的に行われており、母子保健法で1歳6か月と3歳での実施が義務化されている。市はこれに加え、4か月と10か月でも行っているが、新たに対象を拡大する。
5歳児健診は、集団で遊んだり、行動したりするのが苦手かどうかなど、子どもの発達特性を把握するのが目的。小学校入学前の就学時健診より早い時期に保護者が子どもの特性をつかんで対応することで、その子に合った学習環境の用意などへとつなげる。国が実施を推奨しており、全国的に導入が進んでいる。
市は今夏、無作為に選んだ年度内に5歳になる子どもの保護者に案内状を送付し、成育面に関するウェブアンケートに答えてもらう。健診は、こどもの未来健康支援センターなど2か所で12月に実施。希望者や市が勧めた子どもに受診してもらう予定。子どもたちが集団で遊べる場を用意し、保育士らがその様子を観察後、医師が診察する。心理士らへの相談が受けられる。
■海外企業誘致・PRに力
市独自で海外企業の誘致に取り組むため、約1000万円を計上した。PRを目的としたホームページ作成、海外企業からの問い合わせにも積極的に応じる。
市内には鉄鋼、電力関係の大企業もあり、取引を希望する海外企業からの需要は多いと見込む。市側で企業間の橋渡しを行うほか、市長らが市内の企業関係者らと出向いて、トップセールスも展開するという。担当の企業立地課は、文化交流事業などが盛んな台湾をはじめ、欧州や米国など広い地域からの進出を見据え、「じっくりと取り組む第一歩になる」としている。