どうする?「おひとりさま」の終活 負担と継続性が決め手、期待を寄せるのは…

2025年12月30日47NEWS


 川崎市に住む道代さん(72)=(仮名)と宏さん(79)=(仮名)夫婦は、子どもがなく、2人とも末っ子。きょうだいは皆高齢で頼れない。宏さんは病気で手術を受け、現在はリハビリ中だ。

 「どちらかは必ず1人になる」という不安から、生前の見守りから葬儀・埋葬までサポートする終活支援サービスに2人で申し込んだ。サービスを提供するのは、市の社会福祉協議会だ。

 「民間のサービスは費用が高く、頼んでいいのかどうか見極めが難しい。自治体でこうしたサービスが始まるのをずっと待っていた。気持ちが楽になってものすごく安心」と道代さん。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年の65歳以上の単身世帯割合は2割となる。未婚率が上がり、身寄りのない高齢者が急増する社会の到来に備えるため、「おひとりさま」や子どものいない夫婦らを対象に終活支援に取り組む自治体が増えてきた。

▽増える問い合わせ

 道代さんと宏さんが利用したのは、身寄りがない高齢者らの終活を支援する川崎市の「未来あんしんサポート事業」。市の補助を受け、川崎市社会福祉協議会が①生前の見守り、②遺言作成支援・執行、③葬儀・埋葬を柱に支援事業を始めた。24年度からは国のモデル事業になっている。

 見守りは、月に1回の電話と半年に1回の訪問、希望に沿った葬儀や埋葬、各種届け出、遺言の執行などが含まれる。市内在住の原則65歳以上、葬儀や埋葬を行える親族がいない―などが条件。入会金2万円や年会費9600円のほか、葬儀埋葬費用と遺言執行報酬充当分などを含めた預託金60万円が必要だ。

 市民からは「1人暮らしの友人が孤独死し、人ごとではなくなった」といった多くの相談が寄せられている。転居や死亡などで解約した人もいるが、契約者は累計で50人となった。担当者は「問い合わせ含めどんどん増えているという感触がある」と話す。

▽「私が私でいるうちに」

 愛知県大府市の江藤ひろ子さん(78)は1人暮らし。娘はいるが、外国在住だった。

 昨年、もしもの時に知らせてほしい人や預金などの情報を市に登録できる「さくらMIRAI(ミライ)サポート」と名付けられた終活支援制度に申し込んだ。

 看護師として今も働いているが、頸椎の手術や脳梗塞を患ったことがきっかけになった。「娘には迷惑をかけたくない。認知機能が落ちる前に、私が私でいられるうちに申し込めて良かった」と話す。

 大府市の制度では、独自のエンディングノート「さくらノート」を配布するほか、ノートの保管場所や緊急連絡先、預貯金・保険情報、かかりつけ医、終末期の医療、遺言書、葬儀、墓の希望などを登録できる。

 登録と同時にカードが発行され、例えば本人が倒れて意識がなくても、携帯しているカードを元に市に問い合わせれば、さまざまな情報や希望がわかる仕組みだ。登録は無料で、年齢制限や資産の条件はない。

 友人や知人に葬儀社への連絡や家財処分の業者などへの依頼をしてもらう代理人の登録もできる。

 厚生労働省によると、身寄りのない高齢者を支援するモデル事業を実施しているのは2025年7月時点で大府市や川崎市のほか、京都市や福岡市など全国26自治体。国は今後急増が見込まれる身寄りのない高齢者支援制度を設ける方向で法改正も含めた検討を進めている。

▽薄氷の上

 単身高齢者らのニーズの高まりを受け、終活支援に取り組む民間のサービスは増えているが、金銭面などの課題もある。きめ細かいサービスが期待できる一方、預託金として、百万円単位の高額な料金が必要になることも少なくない。

 十年後、数十年後、自分の死後に実際に執行されるかどうか確認することは不可能で、その時点で事業が継続しているかどうか判断するのも難しい。自治体などの支援が求められているのはこうした事情からだ。

 日本総合研究所創発戦略センターのシニアスペシャリスト、沢村香苗さんは、「単身者は危機感があっても頼れる人がおらず、夫婦はどちらかがなくなれば一人になるのに危機感が薄い。いずれにしても薄氷の上にいる」と指摘する。

 センターの試算では、富裕層向けサービスを受ける余裕はないが、福祉の対象にもならず支援の〝はざま〟に取り残されている高齢者が約2500万人(高齢者の約68%)。うち子どもがいない層は約250万人(高齢者の約6・8%)。

 沢村さんは「“おひとりさま”の問題は、今後自治体や民間企業が大きな担い手になる。ただ、一つのサービスだけでは不十分で、それぞれの得意領域もあるため、今後は役割分担を整理し、自治体と民間企業、ボランティアらが連携できる仕組みを整えていかなければならない」と話す。

 個人としても「例えば、財布の中に緊急時の連絡先を入れておく、近所の人と助け合える関係をつくる努力をするといった備えも大切」と沢村さんは言う。

 国による財政支援も求められる。2005年から身寄りのない高齢者らへの生活支援事業を担ってきた東京都足立区社会福祉協議会「権利擁護センターあだち」の加藤和宏課長は「365日24時間態勢で支援しているが、少ない人員でできることは限られる。事業を継続するには人件費などをまかなうための公的支援が欠かせない」と話している。