頼れる身寄りがいない高齢者 支えるサービス・注意点は

2025年12月26日NHK


人生の最後に頼れる身寄りがいない、という人が増えています。こうした人は今後も増え続ける見込みで、社会全体でどう支えていくか、国や民間で今、さまざまな動きが出ています。頼れる身寄りがいない高齢者を支えるサービスや支援の内容、注意点について解説します。

「頼れる身寄りがいない」とは】

まず「頼れる身寄りがいない」というのはどういう状況かを考えてみます。たとえば夫婦でも高齢になって相手が先に亡くなった場合、1人になります。誰かの手を借りなければ解決できない困りごとも増えてきますが、家族や親族がいない人もいますし、あるいは、いても疎遠だったりして頼れないという人は少なくありません。こうした人は今後も増え続ける見込みで、どう支えていくか、国や民間で今、さまざまな動きが出ています。

【どんなことで困るのか】

どんなことで困るのか、主なものをまとめてみました。

まずは「日常生活の困りごと」です。介護はまだ必要ではないものの「定期的な見守り」があると安心という人もいますし、判断力に自信が無くなってくると「金銭管理」に負担を感じるという人も出てきます。

2つ目は「入院や入所などの手続き」です。入院や施設に入所する場合に、身元を保証する人や緊急時の連絡を受ける人を求められることがあります。

3つ目は人生を終えた後の「死後事務」です。葬儀や家財の処分、死亡届の提出、公共料金の解約などの手続きなども含まれています。こうした困りごとの一部は成年後見制度など判断能力が不十分な人向けの公的な制度もありますが、制度の対象ではないものの支えが必要な人も増えてきています。

【頼れる人がいない時の支援は】

支えが必要な人たちは今、どうしているのでしょうか。地域によっては、近所の人どうしがお互いにできる部分を助け合うということもありますが、つながりが薄い地域では難しいのが実情です。一方、介護サービスの計画を立てるケアマネジャーなどが本来の業務範囲を超えて、やむにやまれず無償で支援を続けるというケースもありますが、ただでさえ人手不足の中、負担を増す要因となっています。こうした中、増えているのが民間の事業者によるサービスです。

こうした事業者は「高齢者等終身サポート事業者」と呼ばれ、先ほど「困りごと」として紹介した「日常生活の支援」「入院・施設入所の手続きの支援」「死後事務」などを担い、全国で少なくとも400以上あるということです。費用は事業者やサービスによって違いますが、数十万円から数百万円程度かかることが一般的です。

【「高齢者等終身サポート」課題は】

こうした事業者のあり方については消費者保護の面で根本的な課題があると指摘されています。判断能力が不十分なこともある高齢者との契約であること、サービス内容や料金体系などがばらばらで、事業者間の比較が難しいこと、そして利用者が亡くなった後、生前の契約に基づいて残った財産を「遺贈」として事業者が受け取るケースがありますが、それは本人の本当の意思だったのか検証が難しいことなどです。各地の消費生活センターへの契約トラブルの相談なども増え続け、昨年度は420件と10年前の4倍以上に上っています。

一方、国の対応は追いついておらず、事業者を直接、監督・指導する省庁や法律は定まっていません。また国は事業者が守るべき項目を定めたガイドラインを2024年に初めて策定しましたが、罰則や強制力はなく、サービスの質をどう担保するかが課題となっています。

【信頼性の向上へ業界団体設立】

こうした中、民間事業者の動きとして、サービスの質や信頼性を高めようと、このほど業界団体が設立されました。団体では国のガイドラインに加え、独自の入会基準を設けました。たとえば、契約時には複数回面談して利用者の判断能力を確かめることや、亡くなった利用者の「遺贈」は原則として受け取らず、例外的に受けた場合でも経済的に苦しい利用者へのサービス提供に使うなどと定めています。今後は基準を満たす事業者を正会員としてホームページで公表する予定だということで、事業者の公表が始まれば、利用を考える人にとって参考にできる情報の一つになると期待されます。

【国が検討中の新たな事業は】

また国は所得が低い人も利用できる新たな事業の検討を進めています。検討中の案では、費用は原則として利用者が負担しますが、支払い能力が十分でない人は無料や低額で利用できるとしています。ただ、担い手は各地の社会福祉協議会のほか、民間事業者など、さまざまな参入を想定していますが、どれだけ確保できるか見通せないことや、事業運営のチェック体制の整備も含め、課題も少なくないのが現状です。国は2026年の通常国会に必要な法律の改正案を提出するとしていますが、具体的な制度設計に向けては丁寧な検討が求められます。

【私たちは何から考えれば】

今は家族と暮らしていても、将来は支援が必要になるかもしれないという人も多いと思いますが、私たちは何から考えればいいのでしょうか。

この問題に詳しい日本総合研究所の沢村香苗シニアスペシャリストによりますと、まず大切なのは、自分にはどんな支援が必要なのか、具体的に整理するということです。たとえば、日常の見守りは近所の友人に頼れる、とか、逆に死後事務は誰にも頼れないから対策が必要、といったふうに具体的に考えると整理につながるということです。

また注意点としては、サービスなどの利用を考える時には、サービスの質や経営破綻した場合などのリスクもあるので、1つの事業者とまとめて契約するのではなく、必要に応じて依頼先を分散することも大切だということです。地域にどんなサービスや支援があるのかわからない時は、各地の地域包括支援センターや自治体の福祉窓口などに相談できます。

誰もが安心して人生の最後に備えられる環境の整備に向けては国や業界の一層の取り組みが求められますが、私たち自身の準備も大切です。家族が集まる時などにちょっと話す機会をつくってみるといったことも大切ではないかと思います。