家電データで生活見守り 高齢者の異変、早期に察知 医大発ベンチャーが提供

2025年11月04日琉球新報


 炊飯器や掃除機、テレビなどの電力使用データを個別に分析し、高齢者の生活に異変がないかを遠隔で見守るサービスを医大発ベンチャーが提供している。家電ごとの使用状況から生活習慣の変化を把握し、食欲減退や不眠、認知症などの前兆を早期に察知するのが狙い。北海道沼田町など6自治体が導入または導入に向け実証実験をしている。

 サービスを提供しているのは、奈良県立医科大発のMBTリンク(東京)。家電ごとに電力使用状況を示すデータの波形が異なる点に着目した。測定する小型センサーを活用し、自宅などにある分電盤に設置した。約10種類の家電のデータを分析し1分間に1回サーバーに送信する。

 同社によると、毎日規則正しく食事をしている場合、朝昼晩と決まった時間に炊飯器を使用する。使用回数が減れば、食欲が減退している可能性がある。掃除機を使う頻度が減ると筋力低下が懸念され、深夜までテレビをつけていると不眠症が推測される。

 人口2700人ほどの沼田町では、2020年から高齢者住宅など約30戸にセンサーを導入した。役場で介護関連のスタッフが日々データを確認し、変化が見られた場合は電話をしたり自宅を訪問したりする。高齢者の家族も専用アプリで把握できる。

 沼田町の担当者は「1人暮らしの高齢者が家の中でどのような生活をしているのかを把握するのは難しい。このシステムならちょっとした変化でも分かる」と語った。

 MBTリンクは現在、電力に加え水道の利用状況も分析する実証実験を南城市で実施している。同社社長で奈良県立医科大MBT研究所副所長の梅田智広さんは「客観的な情報から異変に早く気付くことができれば、病気が重症化するリスクを減らすことが可能だ」と話している。