高齢者の孤独問題に取り組むAI
2025年10月29日BRIDGE
概要:高齢者の孤独を軽減する対話型ロボットやバーチャルケア伴走サービスなど、AI を活用したスタートアップが相次ぎ登場
インパクト/背景:世界的な高齢化と介護人材不足が進むなか、心理的ケアを AI が肩代わり
定量的ファクト:高齢者向け AI 市場は2025年に約438億ドル規模へ拡大見込み、日本では2030年には約3人に1人が65歳以上となる見通し
Forbes に「高齢者の孤独を AI で解決する」という記事があったので共有したい。
主役はイスラエル発の Intuition Robotics、米カリフォルニアの care.coach、ロシア発で AI コンパニオンアプリを展開する Replika など。彼らはいずれも生成 AI とロボティクスやチャットボット技術を組み合わせ、要介護前後のシニアに話し相手、健康見守り、服薬リマインダーを24時間提供するサービスを売り込んでいる。
火付け役となったのは2022年に一般販売を開始した Intuition Robotics の卓上ロボット「ElliQ」だ。
柔らかな LED の表情と自然言語で高齢者に話しかけ、今日は散歩へ出るよう促したり、孫に送るビデオメッセージを録画してあげたりするのが特徴である。
2024年に発表された最新版 ElliQ 3では大規模言語モデル(LLM)を統合し、ほぼ無限のトピックについて自然な会話が可能になった。独自の「Relationship Orchestration Engine」が会話から記憶を抽出・分類し、将来の対話に文脈として注入することで、まるで古い友人のような関係性を構築する。1日平均30回以上、週6日の対話が発生し、その75%以上が健康・社会的・認知的な活動に関連している。
同社は2022年からニューヨーク州高齢者局(NYSOFA)と提携し、州全体で独居高齢者向けに800台超のロボットを配布する実証を実施。2023年に発表された1年目の成果では、参加者の孤独感が95%減少したと報告され、プログラムは現在も継続中だ。こうした成果を受けて、行政が費用対効果を精査する動きは各州へ波及しつつある。
高齢化社会への対応は特に日本では待ったなしだ。
日本では2024年時点で高齢化率が29.3%と世界最高に達しており、2030年には約3人に1人が65歳以上となる見通しだ。孤独は生活習慣病やうつ病を悪化させる要因として医療費を押し上げ、内閣府の調査では何らかの孤独感を抱える人が約4割に上るとしている。
介護人材不足も深刻で、2025年には約38万人の不足が予測されている。物理的な人手を補完し、しかも保険適用外でも導入可能なサブスクリプションモデルに対して、エイジテック分野への投資は近年急増している。こちらはグローバルの数字だが、調査会社 ResearchAndMarkets によれば、高齢者ケア全般における AI 市場は2025年に約438億ドル規模に達すると推計されており、高齢化が急速に進む日本市場の潜在性は特に大きい。