電力会社Looopが描く未来の家、グラモ開発の次世代ホームIoT「9DOTs」で目指すウェルビーイングな暮らし

2025年10月18日@DIME


生活の基盤となる自宅。家で過ごす時間が快適であれば、心身共に健康でウェルビーイングな日常を送ることもできる。もしその快適さがIoT(Internet of Things/モノのインターネット)で手軽に実現できれば、人々の生活はまだ想像したことがないほど画期的に向上するかもしれない。

電力事業を展開する株式会社Looopは、ホームIoTを手がける株式会社グラモの完全子会社化を通じて、スマートホーム事業に本格参入することを2日に発表した。両社は共同で、インターホンやHEMS(Home Energy Management System/ホームエネルギーマネジメントシステム:ヘムス)、セキュリティ、見守り機能などを統合した次世代ホームIoT機器『9DOTs(ナインドット)』を発表。Looopが提供する市場連動型の電力プランと連携させることで、エネルギーの最適化だけでなく、将来的には暮らしのあらゆるサービスをパーソナライズして提供するプラットフォームの構築を目指す。

Looopはもともと、2011年3月の東日本大震災で被災地に太陽光発電を設置するボランティア活動がきっかけで立ち上がった。被災地で「電池が使えることがいかに貴重なことか」を実体験したことから「自然エネルギーを広めたい」という思いが生まれ、翌4月に株式会社Looopを創業した。その後、太陽光発電システム事業や電力小売事業を展開している。

Looopの代表取締役社長 CEOの中村創一郎氏は、現在ドバイ在住。その他にもインド、オマーン、キルギスタン、ケニア、フランスなど世界各国で生活してきた。また6人の子の父親でもあり、一部の子どもたちもそれぞれ海外で生活している。こうした海外生活を通して中村氏は「日本の電力が世界に比べて大きく遅れてしまっている」と痛感したという。「世界ではすでに再生エネルギーをエネルギーの中心に添えて、コストを大幅に抑えながら、社会全体の電力システムを改革することに成功しています」と語り、「一方で日本では再エネの導入が頭打ちとなっており、むしろコストは増大。昼間に生まれる膨大な余剰電力は有効に活用されることなく捨てられてしまっている」と日本の現状を明かした。

「再エネの進化を引き出すためには、発電量を増やすだけではなく、家庭、社会全体、暮らし方を根本から変えていく必要があります。その鍵となるのが、家庭の中のエネルギーマネジメントシステムであるスマートホームです」

スマートホーム事業を思い描いていた中村氏は、グラモが開発した『9DOTs』に将来性を感じたという。

「これ1台で家庭全体をスマート化して、AIが暮らしを予測して動かしてきます。従来のIoTを超えた画期的な技術でした。私自身初めて体験した時に、これはエネルギーの使い方を変えるだけではなくて、“人々の暮らしそのもの”を変えていくデバイスになると深く惚れ込みました」

中村氏は『9DOTs』について、「従来のHEMSは“見える化”を中心とした仕組みで便利なのですが、社会全体の行動を大きく変えるまでには至っていません。でもグラモの技術は家庭の中心に入り込んで、電気の使い方だけではなく、日々の生活習慣を変えていく」と語り、「私の自宅にも『9DOTs』を導入していますが、我々家族の生活は確実に変化しました。このデバイスは“社会のあり方”を変えていくと確信が深まりました」と称賛。グラモの代表取締役・後藤功氏に「一緒に未来切り開いていこう! 日本の遅れを取り戻そう」と持ちかけたという。

高齢者の見守りから詐欺対策まで…スマートホームが広げる未来の可能性

続いて登壇したグラモのCEO後藤氏は、「できないことを、だれでもできることに」という企業理念を紹介。これまで『iRemocon』など先進的なIoT機器を開発してきた同社が、Looopとの協業で生み出したのが『9DOTs』になる。後藤氏は『9DOTs』を「これひとつで『超スマートホーム化』を実現するデバイス」と語った。
「グラモの特徴は、最先端のホームIoTに必要なもの全てを自社で開発して、自社で提供を行っています。よくあるのは、スマートロックはA社さん、HEMSはB社さん、家電制御はC社さんと別々で、それらを集めることが多いんですけども、その場合は設定が非常に複雑になります。もし問題が発生した時に、一体どこが悪いのか分からず、責任の所在も曖昧になってしまうという問題がありました。これが集合住宅の1000部屋、1万部屋、10万部屋みたいな規模になってくると、管理会社さんは管理しきれません。弊社の場合は、全て私どもが開発して提供し、管理し、サポートまでしていますので、そういった問題が発生しません」

こうした特徴の他にも、以下のような機能があるという。

オールインワン機能: インターホンモニター、ホームIoT、HEMSモニター、セキュリティ、見守りの機能を1台に集約。これまで壁に多数設置されていた機器をスタイリッシュにまとめる。

提案型AIエージェント『グラモン』: 本体に搭載されたAI『グラモン』が、室内のセンサー情報やインターネット上の情報を基に、「照明を暗くしましょうか?」「今日は燃やすゴミの日です」など、ユーザーの状況に応じた最適な提案を音声で行う。

簡単操作: AIによるサポートに加え、よく使う機能を登録できる『9つのショートカットボタン』を搭載。デジタル機器が苦手な人でも直感的に操作できる。

後藤氏は「設定をいくら簡単にしても、興味ない人は絶対に使わない」と明かし、「『9DOTs』は、誰もが必ず使う“インターホン”という場所を起点に、利用率100%を目指しています。何もしなくても、“いつの間にか便利で快適な生活が送れる世界”を実現します」と製品コンセプトを語った。

またLooopのCOO・藤田総一郎氏は、両社のシナジーによる3つの狙いを発表。例えば30分ごとに電気料金単価が変動するLooopの市場連動型料金プランと『9DOTs』を連携することで、AIが最も電気代の安い時間帯を自動で判断。EVの充電や食洗機、洗濯機などを稼働させることで、ユーザーは意識することなく電気代を節約できる。また、カメラやセンサーを活用し子どもやペット、高齢者の「見守り」や「セキュリティ」をサポート。安心・安全という「暮らしに“でんき+α”」の付加価値を提供する。また将来的には『Looop Platform』を構築。『9DOTs』や『Looopでんき』から得られる“家ナカ”の行動データや電力使用データをAIが学習し、ユーザー一人ひとりに最適化された電力プランを提案する。その他にも保険や家具・家電、ファッションなど外部のサービスプロバイダーと連携し、「ユーザーに最適なサービスを最適なタイミングで提案する」ことを目指す。

自宅に『9DOTs』を導入している中村氏は、実際に感じた生活の変化を聞かれ、「一番大きく変わったのが、家族をすぐに繋げられること」と回答。海外生活が長く別々に生活していることもあり、「海外で一人仕事をしていると『寂しいな』と思うこともあるんですが。スマホで電話しなくても、今、何をやっているのか見ることができる。『なんか暇そうにしているな』と思ったら、『ちょっと電話してみるか』といったことができるのは。すごく大きく変化したな点です」と語った。

「また妻からも好評なのが、電気が勝手に明るくなる、暗くなるという設定です。朝、子どもたちが起きない時に電気が勝手に明るくなって、『朝だよ』と起こして学校に行かせることができる。3点目は、時間帯によってどこの部屋で誰が活動しているのかがマップ分かるようになっていること。あとは、電気代を何キロワットアワー使ったかというのも分かる。夏休み中に夜の間に子どもたちがクーラー回していて、妻が電気代をリアルタイムで見て『電気を使うのやめなさい!』と翌日に伝えることができたので、1か月後の請求時ではなく、すぐに分かるのはよかったと言っていました」

家の中の人々の活動が把握できることで、介護や見守りなどにも活用が期待できる。中村氏は「僕の家には2歳の子どもがいますが、スマホからその子が何をしているか見ることができます。また『誰がその場所にどのぐらいの時間いたか』といった情報も分かるようになる。例えばうちには14歳の受験生がいますが、彼が受験勉強をちゃんとやっているのかも見ることができます」と語り、「この機能をもっと拡張していくことで、赤ちゃんやペットの見守り、高齢者の見守りは確実にできると思います」と未来を見据えた。

「高齢者の方がアルツハイマーになってくると、活動量が一気に低下するらしいんですね。例えば『9DOTs』を設定して、(両親や高齢者の)活動量が今までよりもだいぶ減ってきてたら、アルツハイマーの予兆が分かるかもしれません。今後の可能性という面では、インターホンとも連動していますので、詐欺が心配な場合は誰からが代理応答をしてあげることもできる。AIが話の内容がおかしければ『これは怪しい』と告知してくれる。そういった意味では、これは本当に将来的にすごいデバイスになる可能性があります」

Iotの技術で自宅が快適になれば、一緒に過ごす人だけでなく離れて暮らす人とのコミュニケーションや関わり方にも良い影響が期待できる。今後は「スマートホームから生まれるウェルビーイング」が一般的になっていくのかもしれない。