中部電力、全国で高齢者見守り5割増へ 電力データを30分単位で分析
2025年07月16日日経新聞
中部電力グループは電力データを使って高齢者を見守るサービスを全国で本格展開する。各地の自治体を介し、一人暮らしの自宅などに導入しやすい仕組みをつくる。異変を早くつかんで孤独死リスクを減らし、高齢者が賃貸住宅に入居しやすくする。見守りサービスを地域単位で広げ、契約先の数を2025年度中に5割増やす。
サービスはスマートメーターの電力消費データを、独自のアルゴリズムを使って30分ごとに分析する。電気不使用のタイミングや長さなどから異変を察知し、本人や家族、不動産事業者に連絡する。中部電の販売子会社の中部電力ミライズと三菱商事が共同出資する中部電力ミライズコネクトが、23年から不動産管理会社などに提供している。
一人暮らしの若者も対象
今年度は中部電の営業圏外でサービス地域を本格的に広げる。管理会社や家賃債務保証会社といった従来の連携先に加え、自治体経由で営業活動に取り組む。
具体的には、県や市町村の職員が単身の高齢者に導入を勧めてもらうなど、自治体単位で契約しやすい仕組みを築く。見守りの対象も一人暮らしの若者などに広げる。
住人が部屋で死亡し早期に発見されなかった場合、部屋の原状回復コストは家主が負担するケースが多い。リスクを避けるために単身高齢者が入居を断られる「住宅難民」が増えている。ミライズコネクトは事業者の不安を軽減するため、自治体を通じてサービスの活用を促す。
これまでに自治体単位で連携したのは名古屋市と愛知県蒲郡市の2市。市営住宅のほか、高齢者や障害者の入居を拒まない国の「セーフティーネット住宅」にサービスを提供した。こうした地域の孤独死防止の成果を各地に周知する。
家がまばらで近隣住民が異常を察知しづらい地域などでは、公共サービスとして見守り需要があると見込む。賃貸物件に限らず、戸建て住宅や分譲マンションといった持ち家での利用も想定する。
自治体単位で導入しやすく
一般的な見守りサービスはカメラやセンサーを設置するため、多くの場合に初期費用がかかる。費用を補助する自治体もあるが、プライバシーの観点から設置をためらう家庭も多い。ミライズコネクトは入居者本人の承諾を得て電力データを活用するため、映像や音による監視よりハードルが下がる。
サービスは中部電と電力契約をしていない住宅も利用できる。電力会社を限定しないため受電契約を変更する必要がなく、自治体がサービスを一括導入しやすい点を売りにする。
25年6月時点で契約先の事業者数は中部圏を中心に約3300社。管理会社だけでなく自治体経由で全国に導入を広げ、25年度末までに5000超に増やすのを目標とする。サービスの利用料は、契約事業者が導入戸数に応じてミライズコネクトに払う。
サービスの使い勝手の改善に向けて、今秋には電力データ分析の即時性を向上させる。使用する電力データを前日のものから当日分に切り替え、異変を感知する精度を高める。ミライズコネクトの担当者は「見守りサービスを当たり前のインフラとして実装させたい」と話す。