親の見守り サービス多彩に 緊急駆けつけ 低栄養も予防

2025年06月17日日経新聞


高齢者の日常生活の見守りや安否確認をする民間のサービスが多彩になっている。高齢化と核家族化の進行で一人暮らしの人が増え、「離れて住む親の健康状態を心配する子ども世代のニーズが強い」(ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏)ためだ。

では見守りサービスはどう選ぶといいのか。一つの目安が親の万一の際にすぐに駆けつけられるかどうか。遠方に住んでいるといった場合は専門スタッフが緊急時に24時間365日駆けつける「緊急通報型」が選択肢。比較的近くに住んでいても親の健康状態に不安があり、急な悪化が心配な場合は一案になる。緊急通報型は警備会社が提供するケースが一般的だ。

「セコム・ホームセキュリティ親の見守りプラン」では体調の急変時などに親がペンダント型の装置を握るとセコムに救急通報したり、トイレ前など生活動線上に設置したセンサーで例えば12時間、人の動きを確認できない場合に自動通報したりする。

通報を受けると、事前に預かった顧客宅のカギを持って警備員が駆けつける。警備業法では異常を検知してから原則25分以内に警備員が到着することを求めている。セコムは全国約2500カ所の拠点があり、緊急通報に対応するようにしている。費用は機器のレンタル契約の場合で設置工事料4万8400円、保証金2万円のほか、月利用料5060円を払う必要がある。

ただ緊急通報型は費用が高くなりやすい。親の家が駆けつけられる距離にあったり、健康状態に大きな不安がなかったりするなら、家電を活用するタイプが向きそうだ。センサーなどの専用端末を取り付け、異常があるときに家族に通知が届く。

NTTドコモと、家族間の写真・動画共有サービスのチカク(東京・渋谷)が24年5月に始めた「ちかく」は親の自宅テレビに専用端末を接続すると、親の在室状況が子どものスマホアプリに届く。在室状況から大まかな生活サイクルが分かるほか、事前に設定した朝の一定の時間に在室を確認できない場合はアプリに通知する。

親側の専用端末はカメラ機能も内蔵し、親側は自宅のテレビで、子ども側はスマホでテレビ電話をすることが可能だ。専用端末は全国のドコモショップで扱い、ドコモが示す参考価格で3万3000円。月利用料は1980円だ。

家電活用型ではより安価なサービスもある。中部電力などが出資するネコリコ(東京・千代田)が手掛ける「まもりこ」は、振動を感知する端末を冷蔵庫に設置する。扉の開閉が一定時間ない場合のみ、子のスマホアプリに通知する。アプリでは開閉履歴を時間帯ごとに確認することもできる。費用は端末代が1万3200円、月利用料は550円となっている。

家電活用型は親の生活リズムを把握しやすいのが特徴だ。介護・暮らしジャーナリストの太田差恵子氏は「生活リズムに変化があった場合に気づきやすく、医療や介護で早めに対策を取ることが可能になる」と指摘する。

高齢になると一般的に体力が低下し、買い物や料理をするのがおっくうになる傾向がある。十分な食事を取らない低栄養が続くと、心身の機能が衰えるフレイル(虚弱)にもなりやすい。低栄養の予防として注目されているのが配食サービス。「栄養管理ができ、対面で安否確認もしてもらえる利点がある」と畠中氏は話す。

「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」を展開するシニアライフクリエイト(東京・港)は昼食や夕食の弁当を高齢者の自宅に配達する。原則手渡しで、受け取りに出てこなかったり、体調が悪かったりする場合は、事前に登録された家族やケアマネジャーなど緊急連絡先に知らせる。全国で約950店をフランチャイズ展開するシルバーライフは顧客に2次元バーコードを発行し、玄関などに貼付。配達の際にスマホをかざし、家族などに高齢者の様子をメールで伝えている。

見守りサービスを利用する際は自治体によっては費用を補助するところがあることを知っておきたい。北海道北斗市や東京都立川市は見守り機器の購入や設置などでかかる初期費用を支援。東京都港区は配食サービスで1食当たり320~488円を補助する。

見守りサービスは今後も広がる余地がありそうだ。総務省「国勢調査」によると、75歳以上で一人暮らしの人は20年に約381万人と過去10年で47%増えた。30年には約577万人と拡大する見通しとなっている。