[社説]高齢者生活調査 困窮と孤立対策が急務

2025年05月23日沖縄タイムス


 県が初めて実施した「高齢者の生活状況調査」は、経済的にゆとりのないシニアの実情を浮き彫りにした。

 今後、急速に増加する高齢単身世帯の困窮と孤立を防ぐ対策が急務だ。
 調査は60歳以上を対象にした

 経済的な暮らし向きが「心配」と答えた割合は38・5%で、全国調査より6・6ポイント高い。

 主な収入源は公的な年金が沖縄60・7%、全国72・6%でどちらも最多。仕事による収入は沖縄22・9%、全国14・7%だった。

 戦後、米軍統治下に置かれた沖縄では年金制度の導入が遅れた影響もあり、低年金や無年金者も多い。平均受給額は全国最低水準である。

 その影響もあるのだろう。働かないと生活が成り立たないという切実な現状がある。加齢とともに就労は困難になるため、家族の支援がない単身高齢者の状況はより厳しくなるとみられる。

 貯蓄が100万円未満は全国の約2倍の41・6%を占める。そのうち、貯蓄ゼロは13・7%いる。

 心配されるのは、世帯収入が低いほど健康状態が「良くない」という傾向が見られたことだ。

 県内は、人口減と同時に高齢化が進み2050年には、全世帯に占める65歳以上の独り暮らし世帯は20%を上回ると推計されている。
 
 何らかの対応を講じなければ、生活保護を利用せざるを得ないなど、追い込まれる人が増えるだろう。

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 一方で、沖縄の良い面を示すデータもある。

 「生きがいを感じる」と答えた高齢者の割合は82・7%、「頼れる親族や友人がいる」割合も96・7%で、いずれも全国より高くなっている。

 家族や友人、地域共同体とのつながりの強さを示す結果だ。

 しかし、人口減少と高齢化がさらに進めば、従来の「共助」もいずれ先細る。

 高齢期の特徴は、健康状態や経済状況の個人差が大きいことだ。定年後、趣味を満喫している人もいれば、支援を必要としている人も少なくない。

 元気な高齢者には社会で力を発揮してもらい、厳しい状況にある人には、適切な医療や介護が届くよう、社会全体で助け合いのシステムを構築しておく必要がある。

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 県は「高齢者フレンドリー」な社会構築を目指している。市町村や企業、NPOとも連携し、本年度、移動手段確保や食の提供、ゴミ出し見守りなどの実施計画を策定する方針だ。

 高齢者が置かれている状況は住んでいる場所によって異なる。中でも、離島町村の高齢化率は、県平均に比べて高い。県には医療福祉施設が少なく、課題が多い過疎地域での支援にまず取り組み、従来の制度や枠組みを超えたサービスを創出してほしい。

 高齢者の生活を支え、地域で安心して暮らせる社会へ向けて、多様な主体による課題解決が欠かせない。