<社説>【「孤立死」2.1万人】社会の安心が揺らぐ

2025年04月15日高知新聞


 単身世帯の増加に伴い、孤独や孤立の問題が深刻化する懸念が指摘されている。社会とのつながりを失った高齢者らの「孤立死」も増えるとみられる。現状を把握して対策に生かす必要がある。

 2024年に自宅で誰にもみとられずに亡くなり、生前、社会的に孤立していたとみられる孤立死をした人は2万1856人とみられる。警察庁がまとめた自宅で死亡した1人暮らしのデータから、内閣府の有識者作業部会が初めて推計した。

 高齢者が多く、男性は1万7364人と8割を占めた。ゼロだった15歳未満を除き、いずれの年齢階級でも男性が女性より多い。

 推計に当たり、死後8日以上経過して発見されたケースを孤立死と位置付けた。発見される前の7日間に、連絡がとれないことを気にかけてくれるような他者との接触機会がなかったと推察され、生前に社会的に孤立していたと強く推認されるとする。概数把握のための線引きだが、発生規模は一定見て取れる。

 1人暮らしの割合は今後も上昇する。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、50年には全国で全世帯の44・3%となる。若者らが集中する大都市圏は未婚が進み、現役世代の単身者が増えていく。

 一方、高齢化や人口流出が著しい地方では、配偶者との死別などで単身高齢者の割合が高くなる傾向が進む。65歳以上が1人で暮らす割合は、高知の27・0%を筆頭に32道府県で全世帯の2割を上回る。独居の高齢者は、同居者がいる人より孤立しがちだ。

 警察庁のまとめでは、24年に全国の警察が取り扱った約20万人の遺体のうち、自宅で死亡した1人暮らしの人は約7万6千人で、4分の3に当たる約5万8千人が65歳以上の独居高齢者だった。

 もちろん全てが孤立死というわけではないが、高齢化が進む中で、社会とのつながりを維持する取り組みが不可欠なのは間違いない。地域社会が暮らしを支える関係性の強化が模索される。とはいえ、必要性が高まる見守り活動にしても、担い手の確保の難しさがのしかかる。

 孤独・孤立対策推進法が昨年、施行された。新型コロナウイルス禍で深刻化した孤立に悩む人への支援強化が求められたことがきっかけだった。安定して暮らせるように、孤独や孤立からの脱却をいかに手助けするかが問われた。

 重点計画には、悩みや困り事が深刻化する前に地域住民が担い手として支える人材の養成促進を掲げる。孤立死の防止への取り組みも強化する必要がある。政府は関係省庁や自治体と連携して防ぐ対策を検討し、計画に盛り込むことを目指す。

 誰もが1人暮らしになる可能性がある。また、向き合うべき課題は地域によって異なる。暮らし全般に関わる幅広い対策が求められるだけに、多面的な議論が欠かせず、支え合う体制を築くにはきめ細かな作業が必要となる。困難が伴うが、対策の加速が迫られる。