「事故物件」再生します 特殊清掃して大規模改装、供養・おはらいも…増える孤独死で高まるニーズ
2025年03月21日東京新聞
住人が不自然な死を遂げた不動産を、俗に「事故物件」という。原因の一つに孤独死が挙げられ、単身者の増加で今後さらに増えると危惧される。事故物件扱いになれば一時的な資産価値の低下は免れないが、適切に施工すれば、よみがえらせることは可能だ。
◆孤独死や自殺、他殺、事故死…
事故物件は、住人の孤独死や自殺、他殺、事故死などが起きた物件を指す。不動産業界では「心理的瑕疵(かし)物件」と呼ばれ、住む人に心理的な抵抗感を与えるとして、売買などの際は取引相手に告知する義務が課せられる。
事故物件を専門に取り扱う全国でも珍しい「成仏不動産サービス」を行っているのがマークスライフ(東京)。不動産の買い取りや仲介を手がける中で、どの会社も扱いたがらない事故物件が多数あると知り、2019年に新規事業として始めた。業容の拡大で、昨年12月には北関東初の支店を群馬県高崎市に構えた。
同社がこの2年間に全国で扱った事故物件は500件以上。至った原因を調べると、孤独死(約50%)と自死(約35%)で大半を占め、特に心理的な抵抗感が強い殺人は4%だった。
◆「誰もがいずれ亡くなるのに…」
高崎支店長の三品直也さん(46)は単身者の増加で孤独死がさらに増えることを懸念する一方で、こう話す。「事故物件は、裏返せばそこに人が住んでいた証し。誰もがいずれは亡くなるのに、誰にもみとられず、発見が遅れたがために『事故物件』のレッテルが貼られるのは、何ともやるせない」
ただ、死後長期間にわたって遺体が放置されると、しみや腐臭などが残るのは事実。同社は供養やおはらいをした上で、臭気や害虫などの増殖を抑える特殊清掃を行い、必要に応じて壁紙や床をはがすなどの大規模改装をする。処置が不十分だと「臭い戻り」が起きることもあるが、「しっかり施工すれば、リフォームできない物件はない」と三品さんは言う。
事故物件は当の住人が亡くなっているだけに、疎遠になった遠方の家族や親類に突然降りかかってくる問題にもなりかねない。三品さんは「人の弱みに付け込んで法外な値段を請求したり、物件を安く買いたたいたりする業者もいる」と指摘した上で、「『富動産』として再生させ、適正な価格で市場に乗せることで、事故物件の悪いイメージを払拭したい」と語る。
◆生前から高齢者を社会で見守る体制を
国立社会保障・人口問題研究所が昨年4月に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、全世帯に占める単独(1人暮らし)世帯の割合は2020年の38%から、50年には44.3%へ6.3ポイント増える見通しだ。このうち世帯主が65歳以上の世帯に限ると、単独世帯の割合は20年の35.2%から、50年には45.1%へ9.9ポイントも上昇する。
頼れる親族のいない単身高齢者は孤独死予備軍となりかねない。
三品さんは「事故物件になるのを防ぐには生前からの準備が欠かせない」と説き、官民が連携して高齢者を社会全体で見守る体制を整える必要があると訴える。
マークスライフでは不動産の生前対策にも乗り出しており、将来の売却などを想定したさまざまな相談にも応じている。