「飼い主孤独死、猫は餓死」の悲劇も 「猫の日」に考える将来…老猫ホーム、ペット信託

2025年02月22日産経新聞


室内飼育が増え、伴侶や家族同然の存在として飼育されている猫。ペットフード協会の調査では、全国で約915万匹が飼育されていると推計される一方で、飼い主が命を落とした際に引き継ぎがうまくいかず、保健所に預けられるケースも少なくない。

2月22日は「猫の日」。「私が死んだあとも愛する猫を守る本」(日東書院本社)を出版した富田園子さんに、〝もしも〟の際に向けた準備の大切さを聞いた。

「親族から『家具といっしょにペットも処分して』といわれる」「飼い主が孤独死し誰も気づかずペットも餓死」「飼い主が事故や入院でペットが家に取り残される」-。本の冒頭では、事前の準備が間に合わずに起きてしまったシビアな〝最期〟のケースが紹介されている。

そういった望まないケースを防ぐため、本の中では遺言書やペットのための信託契約「ペット信託」などさまざまな方策を紹介している。死亡した際や、認知症になった際のペットの世話や飼育費用などをあらかじめ記しておくことで、万が一の際に愛猫をスムーズに引き継ぐことができるという。

頼れる人がいない場合には、人間の「老人ホーム」のように、年老いた猫を介護する「老猫ホーム」や、動物愛護団体などの選択肢もある。それらをあらかじめ検討することで、保健所に引き渡されたり、野良猫となったりする可能性を大幅に減らすことができるという。そのほか本では、すぐに取り組めることとして、自宅で急に倒れた際に備えたスマートフォンの見守りアプリや、猫仲間との関係構築、緊急連絡先を記したカードの作成などを紹介している。

「私自身がシニアの入り口に差し掛かり、万が一を考えずに飼育することが危険だと気づいた。かわいそうな目に遭う猫を作らないためにも具体的な方法を示したかった」と富田さんは執筆動機を話す。

本の中では、飼い主とペットが死亡から数カ月後に発見されるケースも挙げられている。警察庁によると昨年1~3月に自宅で亡くなった1人暮らしの人は全国で約2万1700人で、うち高齢者は約1万7千人で8割近くにのぼる。日本少額短期保険協会「孤独死対策委員会」の統計では、孤独死が発見されるまでの日数は平均18日で、90日以上も3%あった。決して特異なケースともいえない状況だ。

富田さんは「『ペットの未来のためならがんばれる』という人も多いはず。この機会にぜひ自分とペットのセーフティーネットの構築に踏み出してほしい」と呼び掛けている。