卓上型ロボ、賢く会話 ユカイ工学 教育や業務用活用広がる
2025年01月30日日刊工業新聞
ユカイ工学(東京都新宿区、青木俊介社長)は、卓上型コミュニケーションロボットの開発を手がける。同ロボット「BOCCO(ボッコ)」シリーズは2021年3月の発売以来、累計2万台以上を出荷した。
頭部にスピーカーを備え、音声メッセージの送受信に対応。IoT(モノのインターネット)デバイスとの連携により利用者側の人間とやりとりができ、介護施設の高齢者の話し相手などに活用されてきた。生成人工知能(AI)を用いた対話サービスも導入。世界が広がり、市場拡大に弾みがつきそうだ。
「生成AIの一種である『チャットGPT』が公開された22年11月から、我々はビジネスチャンスだと思ってきた」。ユカイ工学のソリューションセールス担当、荒木貴正氏は明かす。
高齢者に対する声かけや見守りに使われるボッコエモは「おはよう」「今日は寒いね」といった会話が可能だ。ただ、せりふは事前登録したものに限られるため、人間とのやりとりを続けるのが難しかった。生成AIの利用により、こうした課題が大幅に改善される。
23年7月に始めたサービス「変身エモちゃん」ではチャットGPTを活用。ボッコエモが「博士ちゃん」や「コックちゃん」「鼓舞ちゃん」などのキャラクターになりきり、利用者と会話する。
例えば博士ちゃんでは子どもが「天動説って何」と話しかけるとボッコエモがその内容を答える。コックちゃんの場合は「今日の晩ご飯、何にしよう」と話しかけると「寒いから温かいビーフシチューがお薦めだよ」などと回答し、追加で用意する食材や作り方のレシピまで教えるという具合だ。
「ロボットが一方的に言葉をしゃべるだけでは会話が長続きしない。人とロボットが対等になって、初めて会話が続く」と荒木氏は指摘する。相手の話した内容や答え方によって発話内容を変える。
生成AIはまだ初期段階であるため、つじつまの合わない回答をすることもある。ただ、技術が進歩して互いのやりとりがスムーズになれば「高齢者向けだけでなく子どもの話し相手や教育用、さらにオフィスのBツーB(企業間)の世界にも活用領域が広がっていく」(荒木氏)と先を見据える。
「会議で司会進行役をさせたり、体重計や血圧計データと連動した対話で病気予防・早期発見に生かせたりするかもしれない」。荒木氏は夢を語る。