マンション孤独死どうすれば<3>管理組合の手続き、フローチャート公開 予納金の相場は 「滞納金の早期清算を」

2024年12月30日神戸新聞


 超高齢社会を迎え、高齢者の1人暮らしが増える中、マンションの一室での孤独死も珍しくない。区分所有者が亡くなって相続人が分からない場合、管理組合は滞納金の請求などに、どのような対応を取ればいいのか。NPO法人こうべマンション管理支援機構(神戸市)の理事長、植田雅人さん(68)に、相続財産清算人(旧・相続財産管理人)の選任などの手続きついて聞いた。=全3回の3回目=

 ■予納金の相場

 マンションの一室で1人暮らしの高齢住民が亡くなり、身寄りが分からない。

 こういったケースを放置すれば、管理費・修繕積立金の滞納が膨れ上がってしまう。

 管理組合はまず、弁護士などに依頼し、相続人を調査する必要がある。

 相続人が全員、相続放棄しているか、相続人がいないなら、手続きは管理組合による相続財産清算人の選任の申し立てに移る。

 相続財産清算人は、亡くなった人に代わって財産を処分し、債務を清算する役割を担う。

 利害関係者が家庭裁判所に選任を申し立てることができ、弁護士が選ばれることが多い。

 管理組合は申し立てに当たり、予納金を納める必要がある。

 予納金は、財産を処分した額の中から、相続財産清算人への報酬を払えない場合に備え、実質的な「担保」になる。

 植田さんによると、50万~70万円が相場という。

 ■「マイナス面しかない」

 相続財産清算人が物件の売却手続きを取るが、特に古いマンションでは、申し立てが遅れれば、その分だけ資産価値が落ち、売却額が下がってしまう。

 そして売却額の中から、管理費・修繕積立金の滞納分などの債務が支払われる。

 相続財産清算人への報酬も含めて清算し、足らなければ、予納金から支払われる。

 滞納が多額なのに売却額が小さければ、予納金が全額返ってこないことがあるという。

 植田さんは「身寄りのない区分所有者が亡くなった場合、管理組合はできるだけ早く対応すべきだ。輪番制で役員を決めているマンションでは、手続きが煩わしくて『次の役員にお願いしよう』となるかもしれないが、対応が遅くなるのはマイナス面しかない」と話す。

 現在、区分所有法の改正が議論されており、「所有者不明専有部分管理制度」の新設が検討されている。

 相続財産清算人の制度では、他の財産も含めて対象にしなければならないが、同管理制度ではマンションの部屋に限って清算できるようになるという。

 導入されれば、手続きに要する時間が短縮され、予納金も少ない額で済むようになる可能性がある。