マンション孤独死どうすれば<2>管理組合が着手すべき二つの調査 相続人の確定に1年以上かかる場合も
2024年12月30日神戸新聞
超高齢社会を迎え、高齢者の1人暮らしが増える中、マンションの一室での孤独死も珍しくない。区分所有者が亡くなって相続人が分からない場合、管理組合は管理費などの滞納金を払ってもらうために、どのような手続きをすればいいのか。NPO法人こうべマンション管理支援機構(神戸市)の理事長、植田雅人さん(68)は「まず二つの調査に着手すべき」と話す。=全3回の2回目=
■亡くなった住民が所有者か
マンションの一室で、1人暮らしの高齢住民が亡くなった。
身寄りが分からない。
管理費・修繕積立金の滞納額は積み上がるばかり。どこに請求すればいいのか…。
こんなケースが起きれば、管理組合はどうすればいいのか。
植田さんによると、まずは「物件」と「相続人」の二つの調査が必要になる。
物件の調査では、最初に登記簿謄本を入手する。
物件の名義が亡くなった人かどうかを確かめ、抵当権などが設定されていないか確認する。
亡くなった住民が区分所有者だと思い込んでいたら、実は別の人だったということもあるという。
その場合は、所有者に滞納額の支払いを請求することになる。
■しばらく様子を見ることも
抵当権が設定されていれば、しばらく様子を見るのも手段の一つ。債権者による競売申し立てなどで、所有者が代わる可能性がある。
新たな所有者が現れれば、滞納分を請求すれば良い。
住宅ローンを支払っていたなら、団体信用生命保険の保険金支払いにより、債務が消えている場合もある。
■相続関係の確認、1年以上かかることも
相続人の調査は、まずは配偶者と子どもがいるかを確認するが、いなかったり相続放棄していたりすれば、次の順位は故人の親になる。
親が死亡または相続放棄していたら、故人のきょうだいやおい、めいになる。
相続人の調査は、戸籍を入手して確認する。
親族が協力的な場合は費用も手間も少なくて済むが、非協力的だったり身寄りがなかったりすれば時間がかかる。
管理組合が自力で調べようとするなら、役所に利害関係などを証明しなければならないので、かなり煩雑な作業になる。
職務上請求ができる弁護士か司法書士に依頼するのが賢明だ。
その場合でも時間はかかる。
戸籍謄本などは郵便で役所に請求し、返信を待つので、一度のやりとりで1週間~20日程度かかるという。
本籍地を追うことになるが、故人が転籍を繰り返していた場合は、転籍先にその都度、請求しなければならない。
植田さんは「相続関係を確定するだけで、1年以上かかることもある」と話す。
■面倒に巻き込まれたくない
相続人が判明したら、管理組合は亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続人の相続放棄などを照会することができる。
時間をかけて相続人を見つけても、相続放棄されることは少なくないという。
相続すれば、預貯金や不動産だけでなく、借金など「負の財産」も受け継ぐことになるため、故人との関係が疎遠になるほど、面倒に巻き込まれたくないという心理が働きがちという。
相続人が相続放棄などでいない、または不明な場合、管理組合による相続財産清算人(旧・相続財産管理人)の選任申し立てに入ることになる。
次回は具体的な手続きの流れについて説明する。