1人暮らし高齢者増加 社会で見守り孤立を防げ【論説】

2024年12月20日福井新聞


1人で暮らす高齢者が全国で増加している。未婚であったり、配偶者と死別したり子どもが独立したりと理由はさまざま。年を取るにつれて体力や認知機能が衰え、孤独死の恐れも高まる。誰もが1人暮らしを経験する可能性があるだけに、地域社会で孤独や孤立を生まないよう支え合う対策が急がれる。

 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、世帯主が65歳以上の単独世帯数は2020年の738万から50年には47%増え1084万となる。都市部やその周辺を中心に増加は顕著で東京都は148万世帯に達する。

 福井県をみると、50年の全世帯のうち高齢者単独世帯は18・6%の4万8千世帯。全国で最も割合が低いものの20年比で1万4千世帯増えると見込まれ見過ごすことができない問題だ。

 高齢になると、賃貸住宅が借りにくくなる。社会や地域から孤立しやすくなり、病気の際の支援などを頼める人がいないなどの事態に直面する恐れがある。

 孤立を巡っては政府が今年6月に孤独・孤立対策の重点計画を決めた。NPOなどと協力して支援策を進めるとする。具体策はこれからだが、電気の使用量を見たり、情報通信技術(ICT)を使ったりして、生活の様子を見守りやすくする工夫も不可欠だろう。

 身寄りのない高齢者にとって入院や介護施設入所などの身元保証、日常の金銭管理も課題になる。こうした手続きを支援する民間サービスはあるが、近隣に事業者がなかったり、所得が低かったりすれば利用が難しい。関係法令が十分に整わず、契約トラブルなども報告されている。

 総務省行政評価局は、高齢者が安心して利用できるよう厚生労働省に求めている。法律に基づいて行政が民間事業者に目を配るべきである。孤立したまま亡くなり引き取り手がいない「無縁遺骨」も増えている。保管期間が自治体によって違い、国が一律のルールを示すべき時期に来ている。

 自治体の関係する組織で情報を共有し、高齢者の居住状況など現状を把握することから始めたい。自治体が相談窓口をつくり、1人暮らしの人を中心に頼れる家族らがいるかどうかを確認し、その人らを緊急連絡先として登録する。身寄りがなければ、亡くなったときに対応できる組織を紹介することも必要となる。

 解決には自治体と地域のさまざまな組織の協力が欠かせない。1人でも孤立することなく安心して暮らせる仕組みづくりは待ったなしの課題だ。