[社説]独居高齢者の急増に備えを
2024年11月15日日経新聞
これから増えていく一人暮らしの高齢者にどう寄り添い、どうやって支えればよいのか。日本社会の大問題として対策を真剣に考えなければならない。
国立社会保障・人口問題研究所がまとめた都道府県別の世帯数の将来推計によると、75歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は2020年の22.4%から右肩上がりで上昇し、40年時点では27.4%になる。この割合は19年に公表された前回推計(22.9%)よりも高くなっている。
1971〜74年の第2次ベビーブームで生まれた世代が全員75歳に到達する2050年には、山形県を除くすべての都道府県で2割を超えるという。世帯の単身化と高齢化が一段と進んでいる。
同居家族の支えがない高齢者の暮らしを社会全体で支える仕組みづくりが急務だ。75歳以上の後期高齢者が増えるので、何より重要なのは医療・介護の在宅サポートと、いざというときに駆けつけられる見守り体制の充実だろう。
健康上の相談に24時間体制で応じ、自ら治療するだけでなく、必要に応じて適切な専門医や介護サービスにつなぐ「かかりつけ医」の重要性が非常に高まる。登録制など踏み込んだ改革が急務だ。
訪問介護は他産業に人材が流出するなど現時点で人手不足があまりに深刻だ。他産業に負けない賃上げによって人材を確保しつつ、各種センサーによる見守りや遠隔サポートを活用するなど業務の省人化を追求する必要がある。
未婚率の上昇で、子どもなど身寄りのない高齢者も増える。判断力が下がった高齢者の財産を管理したり、福祉や住宅賃貸の手続きといった身上監護を行ったりする成年後見の体制づくりが要る。
今回の推計で鮮明になったのは地方からの移住者が多い東京などの大都市にとどまらず、地方圏でも一人暮らし高齢者の比重が増えるということだ。高齢者の暮らしを支える各種サービスを人口が少ない地域で確保する対策にも知恵を絞る必要があるだろう。