見守り担い手も高齢化 確保苦心 代替サービス普及 65歳以上の単身世帯増
2024年11月13日山陰中央新報
1人暮らしの高齢者は増え続け、暮らしを支える見守り活動の重要性は増している。ただ担い手も高齢化が進み、人材確保に苦心する地域も。人の手による活動は先細りが懸念される一方、情報通信技術(ICT)を使った新たなツールやサービスが普及。高齢者を狙った事件も相次いでおり、防犯対策も含め、見守りのあり方は変容しつつある。
9月末時点で約2万2千世帯のうち65歳以上の単身高齢者世帯が3割を占める山口県萩市。11月上旬、市内在住の吉屋卓志さん(76)ら8人が80代の女性宅を訪れ、2時間程度草をむしった。吉屋さんは「根元から抜くので腰をかがめながらの手作業。自分も高齢なので活動をした後は体調を崩すこともある」。
吉屋さんらは、2019年から地域の老人クラブの有志10人で単身高齢者の支援活動をしている。全員が70歳以上だ。スズメバチの巣の駆除や爪切り、還付金の受け取り同行など、多様な依頼になるべく断らず対応する。「支援が必要な人は多い。無理をしないよう、みんなで意識している」と気を引き締める。
市社会福祉協議会の山本真琴事務局長は「老人クラブの存在は大きい。会員にとって新たな生きがいにもなっている。若者の流出は止まらず、高齢者が高齢者を支えざるを得ない」と説明する。
▼民生委員欠員
高齢者の見守り活動はボランティアや民生委員が担うことが多い。しかし厚生労働省によると、22年度末時点で民生委員の定数24万547人に対し、1万3121人が欠員になっている。
厚労省が20年度に行った実態調査では、民生委員の確保が難しかった理由で最も多かったのは「高齢者の就労率が高くなり探しにくい」の73・0%。「地域が高齢化して探しにくい」が71・4%と続いた。
政府は今年9月、高齢化対策の中長期指針「高齢社会対策大綱」を6年ぶりに改定した。担当する市町村の住民に限定している要件の緩和検討や自己推薦方式の導入など、多様な選定方法を導入して担い手確保を目指す方針だ。
▼利用に二の足
人材確保が課題となる中、カメラ中継やメールで安否確認するといったツールは防犯対策にもなり、新たな見守りの選択肢になっている。
一般社団法人終活協議会(東京)は7月からLINE(ライン)で、指定された日時にメッセージを送るサービスを始めた。利用者は「元気です」か「相談があります」を選び返信する。担当者は「出られない時もある電話よりも、自分のタイミングで返信できるラインの方が便利という声が多い」と手応えを語る。
ただ利用に二の足を踏む人も多い。老人ホーム・介護施設検索サイトを運営する民間企業が7月、離れて暮らす1人暮らしの親を持つ40歳以上の男女873人に行った調査では、57・8%がツールやサービスを「知っているが利用していない」と回答。「利用している」と答えたのは14・4%にとどまった。
岩手県立大の小川晃子名誉教授(地域福祉)は「ツールは解決策のひとつだが、カメラ中継は『監視』と受け取る高齢者もいる」と指摘。「親が認知症などになる前にツールの活用を含め、どういう見守りを望むのかを、あらかじめ知っておくことが重要だ」と話す。