「無縁遺体」取り扱いに苦慮、厚労省が手順作成を検討…策定済みの自治体は11%
2024年11月04日読売新聞
死後に引き取り手のない「無縁遺体」が増える中、取り扱いを定めたマニュアルや内規がある自治体は、11・2%にとどまることが厚生労働省による初の実態調査でわかった。自治体は無縁遺体の火葬や遺骨の保管に苦慮しており、厚労省は今後、統一的な手順を示すことも検討する。
孤独死で身元がわからなかったり、引き取り手がなかったりする無縁遺体は、独居高齢者や親族関係の希薄化に伴う引き取り拒否の増加で、増えている。総務省が初めて行った調査によると、2018年4月~21年10月で約10万6000人。読売新聞が今年、政令市と道府県庁所在市、東京23区に行ったアンケートでは、22年度までの5年間で3割増加していた。
無縁遺体は死亡地の市区町村が墓地埋葬法などに基づき、火葬する。自治体では火葬の前後に親族の連絡先を調べ、遺体や遺骨、金品の引き取りを依頼。身元不明や親族から引き取りを拒否された場合は火葬後、遺骨や金品を保管する。故人が残した現金があれば、火葬費に充てるが、ない場合は公費で支出している。
自治体が抱える課題を把握するため、厚労省は全国の自治体にアンケート調査を実施。約1100の政令市や市区町村などから回答が寄せられ、連絡する親族の範囲などを定めたマニュアルや内規が「ある」と答えたのは11・2%だった。
マニュアルがないのは、小規模自治体に多かった。親族の探し方のほか、連絡が取れない場合、遺体や遺骨の保管期間の判断に困るケースが目立った。厚労省幹部は「問題が顕在化したのは最近で、マニュアルの整備が追いついていないのではないか」と指摘する。
一部自治体へのヒアリングでは、火葬の立ち会いや連絡先を調査する負担の大きさ、遺骨の保管場所の不足を訴える声が上がった。「火葬を知らなかった親族とトラブルになるリスクがある」「自治体に任せれば低額で火葬してもらえると誤解している場合もある」などの意見も出たという。
厚労省は今後、専門家や葬儀業者へのヒアリングを実施。さらに課題を洗い出したうえで、統一的な指針を作ることや、自治体に地域の葬送の慣習に応じたマニュアルの作成を促すことなどを検討する。
内閣府によると、1990年に162万人だった65歳以上の独居高齢者は、2020年に671万人に達した。40年には1000万人超になると推計され、対策が急務となっている。