中部電力系CATVが高齢者見守り ふるさと納税活用

2024年10月21日日経新聞


中部電力系ケーブルテレビ(CATV)会社のCCNet(名古屋市)は、テレビを活用した高齢者の見守りサービスを始める。高齢者が住む自治体へのふるさと納税の返礼品として提供し、離れて暮らす親族からの寄付で運営する。まず岐阜県白川町で11月から始め、地域の高齢者福祉を支える自治体向け事業として展開する。

CCNetは白川町を含む中部3県の20市区町をCATVの営業エリアとしている。県東部の山あいに位置する同町の人口は約7000人。一人暮らしの世帯は約1000世帯あり、高齢者の見守りが重要な課題となっている。佐伯正貴町長は「タブレット端末の活用など試行錯誤を重ねた。高齢者が操作を忘れてしまう場合も多く、うまくいかなかった」と説明する。

新サービスは高齢者の自宅のテレビに電源のオンオフなどを検知する端末を設置する。家族らのスマートフォンに定期的に通知する。高齢者に特別な操作は必要なく、普通に日常生活を送るだけで見守り効果が期待できる。見守られることに忌避感のある高齢者も利用しやすいとみる。

白川町にふるさと納税で8万円寄付すると、返礼品としてサービスを1年間受けられる。町外に住む親族が、町内に暮らす高齢者を見守るために寄付する仕組み。11月1日から寄付を受け付ける。

寄付者は機器の設置を希望する高齢者宅を納税時に連絡し、見守りを依頼する。同社のCATV加入世帯の利用を想定する。寄付はサービス費用のほか、高齢者の福祉に幅広く活用する。あわせて同町は見守り相談窓口を通じて家族からの相談を受け付け、民生委員や住人と連携して見守る方針だ。

CCNetは東海地方のCATV事業者12社で構成するコミュニティネットワークセンター(CNCI)グループに属する。CNCIグループは2023年に、白川町や名古屋市立大学と地域課題の解決に向けた連携協定を締結。町職員らも参加した同大学の授業で、テレビを活用した見守りサービスが発案された経緯がある。

一人暮らしの高齢者の増加は多くの自治体にとって死活問題になっている。警察庁がまとめた1~6月の暫定値では、自宅で死亡した一人暮らしのうち65歳以上は7割以上を占める。

人口減少やテレビ離れが進み、地方のCATV会社の経営環境は厳しい。CCNetの23年度末時点のテレビ契約数は22万8000件。営業エリアを広げているものの、近年の契約者数は横ばい傾向が続いている。

今後はCNCIグループの営業エリアの自治体に同様の見守りサービスを提案することも検討する。地域の課題解決に寄与する自治体向け事業を育てる考えだ。